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□Act.3 宿屋の娘と断髪後とコミュニケーション
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Act.3 宿屋の娘と断髪後とコミュニケーション
「……ゆっくり休めましたか?では、お気をつけて」
いつもの言葉を繰り返す。
「なぁ」
しかし、赤髪の男は違った。
「……いらっしゃいませ、宿をご利用ですか?一泊500ガルドになります」
絶対に求めている言葉ではないと知りながら、繰り返す。
「ちげーよ」
ですよね、分かっていました。
「……またのご利用をお待ちしております」
あぁ、これじゃあ緑の目の人は去ってしまう。
「それだけしか、喋れないわけじゃないだろ?あー、その、喋りたくないなら、頷くなり首を振って否定するなりしてくれるだけで良いからさ」
それは、新しいものだった。
『いらっしゃい!』
図々しい言葉遣いはやめなさい。
『ようこそおいでくだだだだだっ』
慣れない言葉を使うのはやめておきなさい。
喋るのが、どうにも得意でなかった。
そこで、両親が考えたのが、仕事中はテンプレ通りの言葉だけを喋るように、とのことだった。
それから、私は音機関店番と呼ばれていた。
そんな私は、休みもなく働くことのほうが楽だった。
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