短編

□"す"
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「ねぇ、なつきちゃん?」
ソファーで眠っていると思っていた秋山が、ぽつりと一言問いかける
「何でしょう、秋山さん?」
デスクに山積みの請求書と格闘しながら、秋山さんの方には目もくれず、言葉のみで返事をする。
「ねぇってば」
「……」
返事が返ってこないとわかると、再び雑誌を片手に彼はソファーに寝そべった。
ここ、スカイファイナンスはあの"100億事件"をきっかけに秋山さんが立ち上げた会社である。
私は彼に雇われている立場。
なので、あまり文句を言える立場であるとは言えない。
しかし、この山積みの請求書と戦いはじめ早3時間。
そろそろ集中力も切れかかってきている。
そして、何より空腹が後押ししてか少しイラついていた私は
「秋山さんもそろそろ手伝ってくれてもいいんじゃないですか!」
思わず心の声を吐露せずにはいられなかった。
生憎、花ちゃんは今日は家の用事とかで早退してしまっている。
二人分の仕事を一人でさっさと終わらせる技量など、残念ながら私は持ち合わせておらず、
何よりこの状況に、私はイラついていた。
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