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□猫と私 @
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「信じられない・・・本当、毎日毎日悪戯ばっかり何が楽しいのか私には全然わからない。」
中庭の隅の方。
誰にも見られたくなくてローブをすっぽりかぶって文句を言ってた。
だって、また悪戯に巻き込まれて私今小さな小学生みたい・・・。
「んもう!!!どれくらいで呪文が解けるの!?」
ムキになって大声を出してじたばた騒ぐ私に気がつく人は誰もいないだろう・・・だって今は授業中で、私はサボりだから。
「はぁ・・・」
「にゃー、にゃー」
可愛らしい声が聞こえて思わずローブから顔だけを出した。
「猫?」
「にゃー」
小首を傾げてこちらを見る赤毛の猫。
丸い目がじーっとこっちを見ててなんて愛らしいのかしら!
「んふふ、あなたとっても可愛い!赤毛ね、お鼻の近くそばかすみたいね(笑)瞳はブラウン?綺麗ね・・・君は女の子?」
「にゃー!!!」
「わかった、男の子ね。ごめんごめん(笑)」
そっと毛に触るとふわふわしててとっても気持ちがいい。撫でる手に擦り寄ってくる猫ちゃんを官能するべくローブを脱いで芝生に座った。
「おかしな格好でしょ・・・誰のせいだかわかる?もしかしたらあなたも知ってるかもしれないわ。なんてね。」
「にゃー?」
「教えてあげるね。
双子の悪戯っ子のせいよ。何を嫌われたのかいつもこんな目にあうの・・・蜘蛛の巣にかけられるし、ベタベタ、ドロドロ、ブツブツ、肌の色が紫になったこともあるわ。何しちゃったんだろ・・・私。ね、なんだろ?ジョージ。」
「んにゃー!?」
猫を相手にして1人愚痴る様は、ひどく滑稽だろうなと思うけど、案外聞き役がいるは悪くない。丸くなって静かに私の話を聞く猫ちゃんに思わず知ってる名前で呼びかけてしまった。
「あ、ごめんね。君の名前ジョージ(笑)どうかな?私の好きな人の名前よ〜素敵でしょ?」
「にゃ、にゃー・・・」
「気に入ってくれた?あ!今のは秘密にしてね。わかる?好きな人。私とジョージの秘密だよ?知られたら2人から酷い悪戯されちゃうかもでしょ?ね!」
「んにゃぁー」
頭をそっと撫でる。
綺麗な赤毛は本当に彼にそっくりで、触ったことはないけれど触り心地はもしかしたらこんなふうに柔らかくて気持ちいのかもしれないと思う。
ふと、ドクンと鼓動が早くなって息継ぎを忘れた魚みたいに苦しくなって芝生に倒れた。
「にゃあ!にゃあ!にゃー」
「・・・っは!・・・あぁ死ぬかと思ったよジョージ?ありがとう・・・もう平気。元の姿にも戻ったもの。大丈夫。待ってくすぐったいよ!」
倒れたままの私の頬をすりすり、ペロペロしてくる姿もまた愛らしい。
体をゆっくり起こして呼吸を整える。
二人の呪文は自然に治まるのを待つと結構後でしんどい目にあう・・・。でも医務室に行かないのは嫌われてしまった2人にというより彼に合わない口実が出来るから。
「ふぅ、もう大丈夫。いつもの事だし慣れっこなんだ。ね?ジョージ。あなたは明日もここにいる?」
「んにゃぁ」
「ふふ、じゃあまた明日同じ頃にここに来ましょう。私もきっと来るから、またお話しよう!ね?」
そうして猫の頭にキスをして、授業へと向かった。明日からの私の楽しみは猫・ジョージに会うこと。どんなに酷い悪戯にあってもあの癒しさえあればなんともない気がする!
いつもよりずっと足取りは軽くて、ちょっとばかしスキップをしてみた。
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