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□こんにちわ恋心
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すべての授業という授業に集中出来ぬうちに放課後になってしまった。おかげでウィーズリーの双子の悪戯にもろにかかってしまった。


「ちっ・・・」


舌打ちを一つこぼした私の足はこころなしか早歩きで、今自室へと向かっていた。教室を出たところで出くわしたミネルバが「自室にお客様がお見えです」というものだからだ。

まぁ彼女であろう事は容易に想像できる。そういえばどこで待てばいいか伝えていなかったことにようやく気がついた。



彼女、アヤメはなかなか起点が効く。そういうところも含めて実はとても好意を抱いている。


彼女の父に勧められ押されるがままに、婚約に至ったわけだが・・・。ひと目見て自分にない全てを持っているようで惹かれたのは確かだった。
婚姻の話はトントン拍子に進んでいきいつの間にやら彼女は妻になった。私としては嬉しい話だったが、お互いを好いていると話した事は一度も無ければ私はしっかりと名前を呼んだことさえなかった。。

故に彼女が父に断りきれず仕方なしに私と結婚したのだろうと思えば、休暇だというのに家に帰ることも出来ないでいたのが理由だったのだが・・・。まさかその為に彼女が職場まで来てしまうとは思いもしなかった。


「話し・・・とは何かね。」

「あ、セブルスさん!」


扉を開けてすぐに目に入ったのは、私の部屋の暖炉の前にあるソファに腰掛け本を読んでいる妻。出来るだけゆったりと声をかけた。


「授業お疲れ様でした。セブルスさん。先生の時はどんな様子なのか気になっていたので今日は見学にこれて嬉しいです。」

「・・・そうかね。吾輩は特に変わらん。」

「そうでしょうか・・・学校の方がリラックスされているように・・・思います。」


ソファに座る彼女に目もくれずに自席について課題を採点する。家での私と学校での私の何が違うというのか。検討もつかない。

『恋』だの『愛』だの言葉やら行動にするのが苦手だ。自分とまるで真逆の存在な彼女にどう接すれば良いかわからない。



「・・・話は家で聞こう。やる事がまだある、しばらくは帰れそうにはない。」

「・・・でも。」

「駅までは送ろう。何かあっては事だ。」


チラリと時計を見れば特急が出るまでさほど時間が無いようだ。
課題は後に回して立ち上がり彼女を見れば俯いていた。


「午後の特急まで時間が無い。」

「いいえ、結構です。一人でちゃんと帰れますから・・・お仕事も溜まっていらっしゃるようですから。お会いできて良かったです。セブルスさん」


そういうと彼女はカバンを掴んで、扉に手をかけて動きを止めた。


「セブルス・・・さんは私がお嫌いですか?」

「それは・・・」

「私は・・・貴方が無理しているように見えてしまって。お嫌いならばそう言ってください、それなら1人で勝手に貴方を想ってる方が随分楽でした・・・」

「・・・、」


返答に困る私の無言を、話の終りと解釈したのかゆっくりと扉を開けて彼女は部屋をあとにした。





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