短編

□妹を超えて(まりじゅり)
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私の初恋の相手は、隣の家に住んでいた年上のお姉ちゃんだった。
名前は篠田麻里子。小さいころからずーっとまりちゃんってよんできた。まりちゃんは私のことを妹みたいってすごく可愛がってくれた。
そんなまりちゃんのことを好きになっちゃったのは、いや、好きになっていることに気付いたのは私が中学生のときだった。そのころまりちゃんは近くの専門学校に入っていて、デザインの勉強をしていた。
ある日、学校の帰り道にある公園でまりちゃんを見かけた。声をかけようと思ってまりちゃんの座っているベンチに近づいていったとき、まりちゃんの隣にしらない女の人が座っているのに気が付いた。栗色の髪の毛がふわっとしていて、とてもきれいな人。私はまりちゃんとその人が笑いあっている姿がとても絵になっているのを見て、立ち止まってしまった。


結局まりちゃんには声をかけられないまま家に帰った私は、自分の部屋に入ったところで自分が泣いていること、そしてまりちゃんのことを好きになっていたことに気付いた。



___そして、私は高校生になった
まりちゃんは今日、デザインの仕事のために東京へ旅立つ。



冷たい風がふく国道の端、私とまりちゃんはバスを待っている。
私たちの間にあるまりちゃんの大きなスーツケースのせいか、まりちゃんが遠く感じて、目元があつくなった。
「珠理奈。寂しい?」
「・・・・・・」
あたりまえじゃんか、そういいたかったけど、何か話したら泣いてしまいそうだった。うつむいてまりちゃんを遠くに連れて行ってしまうスーツケースをにらむ。
「ごめんね。寂しい思いさせて」
「・・・・ちがうっ」
ちがう。そうじゃない。まりちゃんには幸せになってほしいもん。夢を追いかけるまりちゃんを応援したいのに、、、わたしはまだ子供で、まりちゃんについていくことなんてできなくて、、、好きなのに、こんなにまりちゃんのことが好きなのに、、、そのことすら言葉にできなくて、、、、
全部全部情けなくなって、涙があふれてきた


「・・・珠理奈。聞いて。私ね、ずっと珠理奈にうそついてたの」
「・・・え?」
「珠理奈のこと、ずっと可愛い妹だって言ってたでしょ。あれ、うそ。珠理奈のこと妹だなんて思ったことないよ」
「・・・どういうこと?」
まりちゃんの言ってる意味が分からなくて、固まる。そんな私を見てまりちゃんはまったく鈍いなぁって笑った。
「珠理奈のこと、ずーっと好きだったよ。珠理奈が中学生になってからあんまり甘えてくれなくなっちゃたから、言えなかったけど・・・最後だから」
私はあまりに驚いて、しばらく声が出なかったけど、まりちゃんの勘違いに気付いて必死に言葉を紡いだ。
「ち、ちが、、、あのときはまりちゃんが他の女の人と仲良さげにしてるの見かけたからっ」
「え・・・?」
「公園でまりちゃんと髪の毛が栗色ですっごいきれいな人と話してるの見て、この人と付き合ってるんなろうなって思って、、、」
「あー、それきっとにゃろだ。にゃろは専門学校の友達で、そんなんじゃないよ」
「そ、そうなの・・・?」
「うん。で、珠理奈の返事きかせてくれるかな?」
その言葉でようやく気が付いた。私たちはずっと両想いで、ずっと勘違いしてすれ違っていたことに


「まりちゃんが好き。大好き」


やっと言えた言葉は、震えてしまって、やっぱり私は子供だなって思った。
まりちゃんはありがとう、ってつぶやいて、わたしの頭をなでてくれる。


「まりちゃん、あたし決めた」
「ん?」
「わたし、めっちゃ勉強して、東京の大学に入る!まりちゃん、それまで待っててくれる?」


まりちゃんは泣きながら頷いてくれた。あと5分でバスが来る。まりちゃんと私の間にあったスーツケースは、わきによけられた。あー、明日から受験勉強頑張らなくちゃ。

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