よみもの
□四面楚歌
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その日、東方司令部は大荒れだった。
原因はロイが女性に言い寄られている現場をエドが偶然目撃してしまい、機嫌を損ねてしまったことだ。
報告書を手にやってきた少年は口にはしないものの、怒っていますとはっきり顔に書かれている。
「鋼の、すまない。あれは誤解だよ。」
君を不安にさせてごめんね、とエドを抱き込もうとする。
いつもならこのまま素直に抱き留められて部下や弟がいようとバカップルよろしくいちゃいちゃし始めるのだがどうやら今日は様子が違う
エドは自分に伸びてきた腕を払い落として冷たく言い放つ
『誤解ってなにが?俺、大佐がキレイなねーちゃんに話しかけられて鼻の下のばしてんのこの目でみたんだけど。それのどこが誤解なわけ?』
どうやら今回は怒りが簡単には収まらないようだ。慌ててロイが反論する。
「それは視察中に女性のほうから声をかけてきてね。ほらハボックが隣にいただろう?なかなかしつこくてね。そこにたまたま君が来ただけだよ。浮気なんかじゃない。」
私が黙って歩いていても女性のほうからよってきてしまってね、と部下たちにとっては嫌味な言い訳を並べるロイにエドはさらに反撃する。
『どーだか、視察とか何とか言って本当は女の人に会いたいだけじゃねーの?』
この言葉にはロイもカチンときたらしく、少し怒った声で言い返す。
「憶測でものを言わないでくれ。私は浮気なんかしていない。」
もうここからは売り言葉に買い言葉だった
『あんたっていつもあんなんなの?だったら俺がいない間浮気し放題じゃん』
「だから!違うといっているだろう!君がこんなに聞き分けの悪い子だと思わなかったよ」
『へいへい、どうせ俺はかわいくないですよー。キレイなおねいさんとは違って!』
「きみねぇ・・・。君のほうこそどうなんだ。旅で私のもとを離れている間に他の男にホイホイ付いて行ったりしてないだろうな」
『てめぇみたいな色ボケと一緒にすんじゃねぇ!』
「旅先で君が何をしていても私にはわからないだろう?君は電話の1本も寄こしやしないのだから」
『それは・・』
「君のほうが浮気しやすい環境じゃないか。仮に君が他の男と夜を過ごしていても報告しない限り私の耳には入らないのだし」
ここでピタリと言い合いが止んだ。
うつむくエドをのぞき込むとその眼は涙ににじんでいた。