お題

□2.私だって君ぐらいの歳の頃には
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「よう、ロイ!なになに豆っこ、たらしこんだんだって?」

「・・・ヒューズ、その歪曲された情報の情報源はどこだ」

鋼のは確かに猛アタックしてくるが、周りの目を気にしてか場所はわきまえてアプローチしてくるので、この事実を知っているものは少ない。ヒューズの情報源は聞くまでもなく自分の部下だろう。特に長身のニコチン中毒が怪しいな。


「まぁまぁ、そうカリカリすんなや。今日時間あるなら飲みに行かないか?俺は仕事でちょっとの間こっちにいるんだ。」

「そうか、ならば今日はサボらずに仕事に精を尽くすとしようか。」

「じゃあ、また夕方にでも来るわ。」

あぁ、と短く返事をするとバン!と大きな音を立てて扉が開いた。

『たいさーーー!これこれ!サインして!』

何かの書類をひらひらさせながら豆台風が猛進してきた。


「よう!エド。元気にしてたか?」

『ヒューズ中佐!来てたのか』

「中央来たら顔見せろって言ってんのにお前さんたち来やしねぇな」

ごめん。といたずらっぽく笑いながら言う。




「エド、お前変わったな」

ヒューズの言葉に言われたエドワードだけでなくロイも首をかしげる。

「お前さん、しばらく見ないうちにキレイになったな。なんだなんだぁ、恋でもしたかぁ豆っこが」

『だーれーが豆っこじゃー!大体、久しぶりに会って男に言うのがそれかよ!もっと他に言う事あるだろうが!背が高くなったな、とか体が大きくなったなとか!』

相変わらず自分の体の小ささばかり気にしている様子の少年にヒューズは笑ってしまうが、ロイはヒューズのエドワードへのからかいの言葉が自分を冷やかしているように感じてしまって妙に恥ずかしかった。


「鋼の。一体何の用だ。」

空気を変えようとロイが話を切り出す。

『あ、そうそう!大佐これサインしてよ。』

図書館の入室許可書だった。
図書館自体は軍人ならだれでも利用できるが、錬金術に関する本の中には上官の許可書がいるものもあった。

そういえば、新しい本がいくつか入ったと言っていたな。書類を見てぼんやりと思い出す。

「今日は、アルフォンスはどうした」

『アルは今日、古本屋行ってる。今日は別行動なんだ。』

効率が良いからというのもあるが、兄が少しでも大佐と一緒にいられるようにというアルフォンスの気遣いもあった。

「めずらしいな、君ら兄弟が別行動とは。」

言いながら書類にサインをする。
書き終えるとエドワードに書類を差し出す。
エドワードが鋼の義手で書類を掴む前に自分のほうへ書類を寄せる。

『なにすんだよ大佐。』

「この許可書を渡すには条件がある。」

『はぁ?なんだそれ。また面倒なこと押し付けるんじゃないだろうな』

「人聞きの悪いことを言うんじゃない。今日はアルフォンスがいないのだろう。大事なストッパーがない状況で君を野放しにするわけにはいかない。」

『喧嘩売ってんのかコラ』

「落ち着きなさい。条件は一つだけだ。定時になったらあそこも鐘がなるだろう。その鐘が聞こえたら必ず帰りなさい。」

『はぁ!なんだそれ!あそこに置いてある本持ち出し厳禁なんだぞ!夕方までに全部読めっていうのかよ!』

「だから帰れと言っているんだ。そうじゃないと君はいつまでも本を読み続けるだろう。」

軍の図書館は職員は定時で帰ってしまうが、図書館自体は24時間いつでも利用できるようになっていた。

「読み切れなかったらまた明日も来なさい。許可書くらいいくらでも書いてやる。」

『ちぇっ、分かったよ』

「言っておくがこの条件を破ることは許さないぞ。明日職員に君が定時で帰ったか確かめるからな」

約束を破る気満々だったエドワードは内心くっそぉ〜と思いながら書類をひったくって出て行った。

再びバンと大きな音を立てて閉められた扉を、やれやれ、とため息をつきながら見つめる。

「ずいぶん可愛がってるじゃねぇか」

「私はアイツの後見人だからな」

ヒューズは後見人だからねぇ〜と意味ありげな口調で呟いて、じゃあまた後でな!と出て行った。


なんだか妙に疲れたな。
誰もいない部屋でロイは少しの間ぼんやりしていた。
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