人生一度きりってよく言うじゃない?
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鬼の様に忙しかった六連勤を漸く終えて、今日と明日は誰にも邪魔されず過ごそう。
そう決めていたのに。
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『よし、着替えオッケー、化粧オッケー、髪のセットオッケー』
一人暮らしにしては広いリビングで鏡を見つつ、呟く。
昨日までの連勤は本当に忙しかった。
そうよ、会社が何十周年だかの記念でフェアをやるとか言うから、社員みんな頑張ってんのよ。
店長とか副店長なんて目が死んでたわ。
昨日会った二人を思い返し同情する。
けれど今日と明日は私も羽を伸ばしたいのだ。
連勤頑張ったんだからいいじゃないか。
ちなみに準備も終わったのでこれからちょっと遠出する予定である。
何処になんて決めていない。
心の赴くままにー。
いざ、とバッグを肩に引っ掛け立ち上がった丁度その時、スマホが着信を知らせる。
液晶を見れば幼馴染兼お隣さんの由香である。
そういえば今日アイツも休みだったか、と思い応答ボタンを押す。
『はーい』
「あっ水陰?あたしだけど今日って暇だったり…」
『しません。あたしはこれから出かけるんです』
「やっだドコ行くのあたしも行きたい」
『一人で出かけたいんだよおバカ』
相変わらず底抜けに明るい声できゃらきゃらと笑う彼女。
アホではあるが悪い奴ではないしずっとつるんでいるから、もう親友レベルだ。
『で、何さ』
「あのねーうちにさ、今戦国時代から来た武将さんたちが来てんのね。ほんで、みんなに服とか買ってあげようと思って、水陰車出してちょー」
『おい待てコラ。何だって?』
「だから車出して」
『ちっがうその前』
「みんなに服買ってあげようと思って?」
『それの前』
「武将さん!」
武将…?
ぶしょう…ブショウ…。
あれですか、刀とか持って振り回すあれですか。
何つったコイツ、戦国時代から来たって言った?
頭の中でぐるぐる由香の言葉が回る。
そして、
『何それちょー見たい!』
「よっしゃカモーン!」
所詮あたしとコイツは頭の中同じレベ、いや、同じテンションだよ。
悪いか。
自分の予定なんて二の次に、急いで家を出た。
お隣の由香の家はウチと同じくらいの広さで敷地も広い。
母親がどっかの企業のいいポジションに就いているらしく、家を建てるときも自ら設計に立ち会ったとか。
凄い人だよあの人。