short

□Happy Valentine
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「いや、いらねぇ。チョコ苦手だし…悪いけど」



思いっきり横からタックルして
駄目出しをしたくなるくらいすがすがしい、

まるでテンプレみたいな断り方をしている
ジャンを目撃しました。




バレンタインという女の子の戦争の日。


暇そうにしていたコニーと一緒にブラブラしていると
なんとベタなタイミングで鉢合わせをしたことか。




「ジャンって、モテるんだな。

し、知らなかったぜ…!」


「うん。まあ、顔はかっこいいもんね。

女の子の扱いは、全然わかってないみたいだけれど」



「?さっきの断り方はどこが駄目なんだ?」




と興味津津で訪ねてくるコニーに

丁寧にジャンの駄目出しをしていれば

背後から怒りに震えた声が聞こえてくる。



「…おいコニー、サラミ!
お前さっきから、言いたい放題だなぁ」


「あっ、ジャン!聞いてたんだね」


「はぁあ?…聞こえるように言ってんだろーがよ」



咳払いをひとつしたジャンが
少し呆れたように言葉を続けた。





「…だって、ジャンはチョコ嫌いなんでしょ?

せーっかく私が、ジャンのために
チョコ持ってきたのにさぁ」





からかうようにチョコレートの包みを

そっと掴んでちらつかせれば、

えっ、とジャンが振り返る。


まだ、可愛らしい一面も持ち合わせているみたいだ。






「それっ、…俺の、なのか、」





珍しく素直なジャンのその反応に、

横でコニーがぎょっとしているのが

視界の端にちらついた。





「でもチョコ嫌いなら、
ジャンに渡せなくなっちゃったね?

生ものだから無駄になっちゃうし
仕方ないから私が自分で食べることにするよ」




"チョコが嫌いだから断るの? 違うよね"





ここまで出かかった言葉をどうにか押しとどめて

にこりと笑ってジャンに背を向ける。



大人げないかな、とは思ったけれど

こう、微妙に、もやっとした、この感じ。




「ちょっ…待てよ、…何で怒ってんだよ!
…謝るから、おいってば、
…なあ、サラミ!こっち向けって、」



慌てて私の機嫌を取るように隣に並んで歩きだすジャンと

つん、と顔をそむけて会話をする私の背中を

眺めるコニーが不思議そうに首を傾げていた。





「あ、謝るから! お、俺は!

俺は…お前から、お前だけから!
チョコがほしい!!」


「っ、最初から、素直に言ってよね。ジャンのバカ」




「…え?あの2人って、

……付き合って、んのか?え?
…え、えぇええぇえっ!!!?!?!」



夕陽に染まる二人を指差す彼の絶叫は

寮の近くまで、響いていたみたいで

あまりの五月蝿さに、誰もが顔をしかめていたらしい。





Happy Valentine♡


(( 意地っ張りだけど、時々素直になる彼が、
 可愛くて、仕方ない ))


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