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□あぁ、どうか
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階段を下るエレン。
その後ろを、静かに着いていく。
゙ ただ、向かう方向が同じなだけで、
ストーカーなんかじゃない ゙
前を歩くエレンの後ろ姿に見惚れながら
頭のなかで、必死に言い訳を並べる。
「……あのよ」
エレンの声が沈黙を破る。
「っ、…あ!」
まさかの展開に、足が縺れてしまい
階段から転げ落ちそうになった私は、咄嗟に目を閉じた。
「…、…?」
しかし、いつまで待っても痛みは来ず
変わりに何か暖かいものが、私を包んだ。
不思議に思って目を開けると目の前には
恋しくて仕方のない、エレンがいて
エレンに抱き締められていると、瞬時に理解した。
エレンが私の無事を確かめ頬を優しく撫でる。
「エ、エレン、なん…で」
「っとに、お前は危なっかしい!」
その優しい手付きとは反対に、私を怒鳴る。
「ごめん、なさい…」
エレンから離れて俯いた私に、
「だから、…だよ」
エレンが喉の奥で何かを呟く。
それを聞き取れずに首を傾げる私を、
エレンは再度抱き締めた。
「だから、目を離したくねぇんだよ…」
いつもと違う、優しい声と共に。
あぁ、どうか
(( このまま時間が止まればと、切に願った ))
( エレ、ン… )
( …あーもう!好きだ。 )
( っ…え、 )
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