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□いくじなし
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「あのさ、サラミ」





夕飯後、部屋に入ろうとした私に、


ペトラが遠慮がちに声をかける。





「ペトラ…どうしたの?」



「えっと…、」




困ったように眉を下げるペトラが可愛らしい



そんな事を考えていた私の耳に




「オルオが、あなたを好き、だって…」





そんな言葉が入ってきた。





その言葉は何度考えても理解できず、


私は、彼女にもう一度聞き返した。




「ごめん、ペトラ…もう一度、言ってくれる?」




「…オルオが、サラミの事が好きって

そう、伝えてくれって…」





ペトラのその返答に、




『あいつは絶対に俺の事が好きだぜ、


だから俺は、あいつの想いに応えるだけだ』





自信満々にそんなことを言って退ける奴が、


まるで見たかの様に鮮明に、脳裏に浮かぶ。




そんな私の心情を知ってか知らずか、


ペトラが苦笑いを溢した。




「サラミ…多分、あなたの思ってる通りよ」



「やっぱり…ペトラ、わざわざありがとう」





少し頭を下げると、慌てたように




「やだ、気にしなくて良いよ!
私、そんなお礼言われることしてない」




手をブンブンと振る彼女に




「ううん、伝えてくれて、助かったよ。

じゃあ、また明日ね」




微笑んで、彼女の返事を聞いて扉を閉めた。










――――次の日、




兵長の後に続いて馬を走らせる、


リヴァイ班のメンバー達。




その中には、私もオルオもいる。




丁度良い、と思った私は

そっと下がり、オルオの隣に馬を走らせる。




「告白なら直接して…オルオの意気地無し」



「な…誰が、意気地無しだ!」




今にも馬から飛び降りて、


此方に向かってきそうな彼に




「でも…そんなオルオが、好きだよ」




ニコリ、笑って見せると





「な、…っ!!」




彼は、悔しそうな、嬉しそうな顔をした。





いくじなし


(( 笑って目を離した一瞬で、彼が消えた ))


( …何だ? 何で馬だけ走ってる )

( お、オルオがまた舌を噛みました! )

( ……… )

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