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□嫌い、嫌い!
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「ベルトルト、私はあなたが嫌い。 」




いつも、ライナーや私に意見を聞くあなたが


自分で何かを決断することの無いあなたが


私は、嫌いで仕方ない。







「まあ、そう言うな」




向かい合って座るベルトルトと私。



その間に座るライナーが、私を宥める。







「ベルトルト。何か…言ったらどうなの?」





声を荒げるのを我慢して、俯く彼を見やる。





私に目を向けながらも、


目線だけ何処か遠くを見つめるベルトルトに

更に、苛立ちが募っていく。




そんな私に気が付いたのか、

ライナーがベルトルトの肩を軽く叩いた。



そこでハッとしたように、ベルトルトが声を発する。





「サラミ、ちゃん…」




蚊の鳴くような、小さな、声。





「…何よ。」





憎めないと思ってしまうのは、どうしてだろうか。





「僕は…サラミちゃんを好きだと思うんだ」




ヘニャリ、彼が私に屈託の無い笑顔を向ける。





「な、っ」



ガタン、と音を立てて立ち上がると同時に

ライナーが笑う。




「サラミ、お前の負けだ」




「負け?」




キョトンとするベルトルトに、


私は今度こそ、声を荒げた。





「嫌いだと思うのに、憎めない

そんなあんたが…嫌い、なの!」





泣きたい訳じゃないのに、視界がぼやける。


最悪だ、そんな事を思っていると

ベルトルトが私とライナーを交互に見る。






「え…っと、それは…」




「あぁ、照れ隠しだな」




ニヤリ、笑ったライナーが席を立って



「仲良くやれよ、」


なんて、笑って去っていく。





「ら、ライナー…待っ、」




ベルトルトと二人きりになる事に不安を感じ

ライナーを引き留めようと立ち上がるも


ベルトルトの平たい、大きな掌が私の頬を包んだ。






「サラミちゃん…素直に、なってよ」




耳までも赤くなる私を笑って



奴は、涙が出るほどに優しく口付けた。





嫌い、嫌い!


(( 嫌よ嫌よも好きのうち、ってやつかしら ))


( 好きって言って欲しいな )

( っ、うるさい! )

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