series
□背けずに シリーズ
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─あたしには気に入らない人がいる。
…あれは入学式の日だった。
勉強が得意で、負けず嫌いなあたしは中学で首席を取り続けていて、
今回の式では入学試験で首席を取ったものが答辞を言える事になっていたので、
必ず自分が選ばれると思っていた。
…だけどその予想は外れていた。
自分より2点上で合格したものがいたらしく、その人が答辞を言うらしい。
あたしはイライラしてその顔を一目見てやろうと身構えていた。
「答辞。 新入生代表、赤司征十郎。」
「─はい。」
凛として、堂々とした声。
…少し、その声に惹かれた。
赤司 とやらがステージに上がる。
綺麗なお辞儀をしてマイク越しにこちらに向き直る。
…瞬間、心が跳ねた。
鮮やかな赤色をした髪。
まるで宝石のようなオッドアイ。
すらりと伸びた手足。
(こんな、綺麗な男の人見た事ない…)
一瞬だけ見惚れてしまったが、すぐに我に返って頭をブンブンと振った。
女生徒たちのキャーキャーと騒ぐ声のせいで、内容は聞き取れなかったが、
赤司はそんなのを、気にもとめず 堂々と答辞を言い終えた。
それから数日が過ぎ、
名無しさんはバスケ部に入部届けを提出した。
名無しさんは小さな頃からバスケが大好きで、中学では女子バスケ部のキャプテンとして活躍し、県大会優勝の経験を持つくらいのプレイヤーだった。
(バスケの強豪校のこの洛山高校に入れるなんて夢のようだなぁ…)
ウキウキとした気持ちで
洛山高校でバスケが出来るのを待っていた。
…しかし、初めの顔合わせのとき、
男子バスケ部と一緒にしたのだが、そこには赤髪のあの人が見えた。
(ま、まさか…っ)
そう思ってよく見てみると、
やっぱりあの赤司だった。
あのバスケでは有名な帝光中学校バスケ部出身、しかもそのキャプテンを務め、“キセキの世代”と呼ばれた赤司 征十郎と知るのはその数分後の事だった。
(容姿端麗、頭脳明晰、
それに運動神経抜群…)
名無しさんは思った。
──“気に入らない人”だと。