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□やって来て シリーズ
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「やぁ。おはよう、名無しさん。…今日もきみはとても可愛いな」


背後から聞こえたその声に
名無しさんは、嫌な予感がした。


『っ…‼‼』


おそるおそる振り返ると、
思った通り、声の持ち主は 名無しさんがこの世で1番苦手な存在である
ひとつ年上の先輩、
赤司 征十郎だった。


名無しさんは、周りがザワつくのを感じ、何も答えないまま、急いでその場から立ち去った。




いつ頃からだっただろう。赤司が自分に声をかけるようになったのは。

…ずいぶん前に、赤司が生徒手帳を落とした時、それを拾って手渡した記憶があるが、まさかそんなことがきっかけになるとは…


別に 名無しさんは、赤司のことが嫌いという訳ではない。

名無しさんは 男子と話すのが昔から苦手で、もとから男子と話すことなど、滅多に無かったのだ。
男子に喋りかけようとしても
焦って緊張してしまい、
結局、何も伝えられないままのことがたくさんあった。


そんな名無しさんに、女子から絶大な人気を誇る、
鮮やかな赤髪に、人を惹きつけるオッドアイをもち、
頭脳明晰、運動神経抜群な
俗に言う “ イケメン ” である赤司と話せと言うのは無理な話で。


(私のことなんか、放っておいて欲しいのに…っ)


いつも話しかけられる度に そう思っていた。
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