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□この想い シリーズ
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───その日は、新1年生の
部活動見学が始まった日だった。
僕は2年になり、1年生の指導を
しなければならない
いわゆる
“ 先輩 ”
という立場になった。
……だからといって
不安や緊張などないのだが。
このバスケ部は全国でも
有名な強豪校ということもあり、
見学者が大勢いた。
(多すぎても困るんだがな…)
この人数に対して
どう指導しようか考えていると、
『──すみません!!
このバスケ部って1年生でも
マネージャーになれるんでしょうか?? 』
と、1人の女子と思われる声が
後ろから聞こえてきた。
振り返ってみると
思わず、誰もが見とれてしまうような
美少女だった。
緊張しながらも やっと
話しかけてみたのか
顔は林檎のように真っ赤で。
この僕が、数秒、
見入ってしまった。
『 あ、あの…??』
と困ったように顔を覗き込んできた
彼女に、
僕はハッと我に返った。
「あ、あぁ。 マネージャーは1年生から募集しているよ。」
その言葉に、彼女は花が咲くような
笑顔になった。
『 よかった…!!
私、バスケがほんとうに大好きなんです。だから、この高校受かったら、
バスケ部のマネージャーになりたいって決めてたんです。』
“どうぞ、よろしくお願いします ”
と言った君に
なぜか僕は心臓の動悸が止まらなかった。
どうしようもなく、惹かれて
たまらなかった。
思わず、
「名前は?…」と尋ねた。
すると、
『私は、名無しさん 名無しさんです 』
──そう、真っ直ぐな瞳を向け
答えた。
───名無しさん。
この胸の高鳴りは、
“恋 ”
というものなのだろうか。