long

□19 貴方のため
1ページ/3ページ

──翌日。



私はいつもより早く目覚めてしまった。…今日は赤司の誕生日。


(学校だし、出来る事は限られてるけど、精一杯祝うぞ…っ)


気合いを入れるため、寒空の中
まだ日が昇っていない時間に家を出た。





学校につき、靴箱に来ると、まだ自分以外に誰も登校していなかった。



(なんか、新鮮だな…
あ、そうだ!いい事思い付いたっ
えーっと、赤司くんの靴箱は… あった!)


すみれはその場にしゃがみこみ、
鞄の中からいつも入れているメモ帳と
ペンを取り出した。
…赤司へ手紙を書くためだ。すみれはサラサラとペンを滑らせる。

【赤司くんへ。
お誕生日おめでとう!放課後、渡したいものがあります… いつも通り、図書室で待ってます。 すみれ】


『ん、よし…!』


何回か読み直し、赤司の靴箱の中に入れた。

(読んで貰えますように…)

そう思いながら、何となくそこに佇んでいると、─誰か、人の来る気配がした。

「…あれ?吉田さん、早いですね。 …おはようございます。」


黒子だ。いつもこんな時間に来てるなんて感心してしまう。

『おはよう。黒子くん…!』

そう笑いかけると、黒子がふと不思議そうな顔をした。

「そこ、吉田さんの靴箱じゃないですよね? …あぁ、赤司くんのとこですね。」

何もかも悟ったかのように微笑む。
私は顔をカーッと赤くしながら俯いていると、

『…喜んでいただけるといいですね』

静かに、でも優しく黒子らしい励ましの言葉をくれた。

『…っ 有難う。黒子くんっ』

その言葉に、少し、涙が込み上げた。








──昼休み。
今日はさつきと2人でお弁当を食べる日だ。

「…ほんとにいいの?赤司くんと食べなくて。今日、赤司くんの誕生日なのに…」

『ううん、有難う。大丈夫だよ?
…放課後、ちゃんと会えるし。何より、今日はさつきちゃんと食べる日だもん!』

「すみれちゃーんっ
もー… だいすきっ!!!」

さつきがギュウギュウと抱きしめて頬をすり寄せてくる。凄く嬉しい…だが、少し苦しくなってきた。

『さ、さつきちゃん… ちょっと、はなして…』

そう言うとさつきは“ごめんっ”といってパッと離してくれた。

(さすが… 羨ましいなぁ…)

すみれはじっとさつきのそれを見つめていると、目が合って“どしたのー?” と聞かれたので“な、何でもない!”と慌てて目をそらした。


(赤司くんも、あれくらいの大きさの方が好みなのかな…)


そろーっと自分の胸を見つつ、
そんなあらぬ事を考えてしまった昼休みだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ