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□19 貴方のため
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──翌日。
私はいつもより早く目覚めてしまった。…今日は赤司の誕生日。
(学校だし、出来る事は限られてるけど、精一杯祝うぞ…っ)
気合いを入れるため、寒空の中
まだ日が昇っていない時間に家を出た。
学校につき、靴箱に来ると、まだ自分以外に誰も登校していなかった。
(なんか、新鮮だな…
あ、そうだ!いい事思い付いたっ
えーっと、赤司くんの靴箱は… あった!)
すみれはその場にしゃがみこみ、
鞄の中からいつも入れているメモ帳と
ペンを取り出した。
…赤司へ手紙を書くためだ。すみれはサラサラとペンを滑らせる。
【赤司くんへ。
お誕生日おめでとう!放課後、渡したいものがあります… いつも通り、図書室で待ってます。 すみれ】
『ん、よし…!』
何回か読み直し、赤司の靴箱の中に入れた。
(読んで貰えますように…)
そう思いながら、何となくそこに佇んでいると、─誰か、人の来る気配がした。
「…あれ?吉田さん、早いですね。 …おはようございます。」
黒子だ。いつもこんな時間に来てるなんて感心してしまう。
『おはよう。黒子くん…!』
そう笑いかけると、黒子がふと不思議そうな顔をした。
「そこ、吉田さんの靴箱じゃないですよね? …あぁ、赤司くんのとこですね。」
何もかも悟ったかのように微笑む。
私は顔をカーッと赤くしながら俯いていると、
『…喜んでいただけるといいですね』
静かに、でも優しく黒子らしい励ましの言葉をくれた。
『…っ 有難う。黒子くんっ』
その言葉に、少し、涙が込み上げた。
──昼休み。
今日はさつきと2人でお弁当を食べる日だ。
「…ほんとにいいの?赤司くんと食べなくて。今日、赤司くんの誕生日なのに…」
『ううん、有難う。大丈夫だよ?
…放課後、ちゃんと会えるし。何より、今日はさつきちゃんと食べる日だもん!』
「すみれちゃーんっ
もー… だいすきっ!!!」
さつきがギュウギュウと抱きしめて頬をすり寄せてくる。凄く嬉しい…だが、少し苦しくなってきた。
『さ、さつきちゃん… ちょっと、はなして…』
そう言うとさつきは“ごめんっ”といってパッと離してくれた。
(さすが… 羨ましいなぁ…)
すみれはじっとさつきのそれを見つめていると、目が合って“どしたのー?” と聞かれたので“な、何でもない!”と慌てて目をそらした。
(赤司くんも、あれくらいの大きさの方が好みなのかな…)
そろーっと自分の胸を見つつ、
そんなあらぬ事を考えてしまった昼休みだった。