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□18 何気ない幸せ
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両想いになれてからというもの、
昼休みのさつきとのお弁当タイムは
週に1度、キセキの世代のみんなも混ざって過ごす様になった。


…もちろん、赤司と一緒にいる時間を
増やしたいから という理由だ。



みんなと食べるのはやっぱりいつもより賑やかで楽しい。
今も目の前でお弁当のおかず争奪戦が繰り広げられている。

誰のおかずかと言うと…

「すみれっちの卵焼きはオレが頂くっス!」

「いーや!俺だ。テメェは購買のパンでも食っとけ」

「吉田ちーん。唐揚げ、貰ってもいい〜?」

「「抜け駆け禁止!」っス!」


あたしが多めに作ってきたおかずたちを3人(特に2人)で奪い合っている。

…見ていて、とても面白い。
思わず、笑みがこぼれた。

ちなみに、赤司は先生に呼ばれたらしく、まだこの場所にいない。


(絶対、これを見たら怒るのだよ…!)


緑間は 内心ヒヤヒヤしていた。


「お前達。…すみれは僕の彼女なのだが?」

一瞬で空気が凍りつくほどの
冷たく、冷静な声に黄瀬と青峰は
固まってしまった。


全員が振り返ると、
明らかに不機嫌そうな赤司がそこに立っていた。

すみれは慌てて

『いいんです!おかず作り過ぎちゃったんです…。せ、征くんの分は作ってありますんで』

と、2人をフォローした。
赤司も自分の分がちゃんと作られている事に満足したのか、

「良かったな…
すみれに免じて、許してやる」

とだけ言ってあたしの隣に座った。


((あっぶねーっ)ス!)


2人は心の中ですみれに感謝した。


「てゆうか!すみれちゃん、赤司くんの事“征くん”って呼べるようになったんだね!」

さつきがニヤニヤしながら聞いてきて、すみれは顔が真っ赤になった。

『そ、それは…その。』

「あぁ。…とても愛らしいだろう?」


赤司はとても満足げに笑う。


『ま、まだ慣れないんだけど…
でも、名前で呼ぶのって何か、嬉しくなるよねっ…』

そうやって照れながらも微笑むすみれに、この場にいる全員がキュンとした。

それから和やかな雰囲気で
お弁当を楽しんでいると、黒子がふと 顔を上げた。

「そういえば… 赤司くん、明日、お誕生日ですよね? おめでとうございます。」

“プレゼント、ご用意してますんで”

黒子が優しげに微笑んだ。


「有難う。テツヤ。…嬉しいよ」

赤司も嬉しそうに笑う。


(え…?ちょっとまって、今なんて?
“明日は赤司くんの誕生日”って聞こえたような─)


頭の中でパニックを起こしていると、
その様子で気付いたのか、緑間が小さい声で耳元に手を添えて教えてくれた。


“明日─ 12月20日は 赤司の誕生日なのだよ。”


…すみれは動揺した。
自分は盛大に祝ってもらったくせに、
赤司の誕生日の事は何も計画していない。


(何で、聞いとかなかったんだろう…!)


自分で自分を恨んだ。
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