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□12 無防備な君の頬にキスを
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部活動が終わり、彼女に会うため図書室へと向かう。
今日はまだ空が明るい。…今日のようなオレンジに染まる空は、彼女を連想させる。
(早く、きみに会いたい。)
そう思い、歩くスピードを速めた。
やがて図書室へ着き、ドアを開くと、そこは誰もいないかのように、やけに響く時計の針の音しか聞こえなかった。
(…まさか、先に帰ってしまったのだろうか…)
すみれの姿を確認するために図書室の奥の方へと向かった。
…“ドク ”
と自分の心臓の音が高鳴るのがわかった。
勉強していたのだろう、すみれが、ペンを持ったまま居眠りをしていた。
スースーと規則正しい呼吸音が聴こえてくる。
光で茶色に透けて見える長い髪は頬にかかっていて。
長い睫毛が影をつくり、きみの白い肌は 夕日のせいでオレンジに染まっていた。
(あぁ… もう、きみは。)
赤司はそんな心地良さそうに眠るすみれの顔を見て、
“触れたい”
という衝動に駆られた。
「…きみが、悪いんだ。」
そう届くはずの無い言葉をぽつりと呟いて、自分の手をスッと彼女の頬へと伸ばす。
(柔らかいな…)
すみれはとても細い方だが、やはり女子だからだろう。
特有の柔らかさがあった。
触っていても、一向に目を覚まさないすみれの頬にかかる長いサラサラした髪に触れ、口元へ持っていくと、ふわり と漂うシャンプーの香りに包まれ、赤司はくらくらした。
(…もう、我慢できない。)
そのまますみれの髪へと軽くキスをし、さらにオレンジに染まる頬へと口付けた。
リップ音と共に唇を離すと、さすがにすみれは目を覚ました。
『きゃ…っっ⁉』
すぐそばに僕の顔があることに驚いたのだろう。オレンジだった頬がさらに赤みを帯びた。
『あ、あ、赤司くん… 、何して…っ⁉』
顔をそむけながら、慌てて言うきみに、“愛しい”という感情がこみ上げてきて、
優しくきみを引き寄せ、抱きしめた。
僕の腕の中で パニック状態になるきみに
「すみれが 無防備すぎるのがいけないんだ。」
“可愛すぎる”
と付け足しながら、耳元で囁いた。
さらに赤くなり、キャパオーバーといったようなきみが本当に可愛らしくて、僕は小さく吹き出した。
「…とりあえず、帰ろうか?」
と笑いながら聞くと、
すみれが、何か言いたげな顔をしたが、諦めたのか
『… はい…。』
と消え入るような声で答えてくれた。