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□9 火照る頬に秋の夜風
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練習が終わり、
各々帰り支度をしているとき、
赤司が1人でこちらにやって来た。

「吉田さん。帰り、送るよ。」

その言葉に照れながらも
一瞬で舞い上がり、

『はいっ…』

と返事をした。


校門の前で、キセキの世代のみなさんとさつきちゃんに お別れの挨拶をすると、全員、私に挨拶を返してくれた。


(今日は… すごく、良い日だったなぁ)

とすみれが考えていると、
隣で赤司が小さく吹き出した。
すみれは、訳が分からず
あたふたしていると、

「すごく、顔が緩んでるよ?…喜んでくれてよかったよ。お礼になったかな」

と言われ、やっと考えが顔に出ていることに気付き、とても恥ずかしくなった。

“恥ずかしがらなくていいよ”

「きみのそういうところ、すごく魅力的だ」

『〜〜っ』
(も、死にそうなくらいドキドキする…っ)

顔を覗き込んで微笑むあなたに
私は耐えきれず、両手で顔を隠した。

「……どうしたの。顔が赤いよ?」

と言って さらに顔を見ようとしてくる。

『赤司くん…っ それ、絶対ワザとやってますよね…っ⁉ もう、恥ずかしすぎます!』

と言うと、赤司は耐えきれずに大きな声で笑い出し、

“すまない、あんまり可愛らしいから”

と優しく笑いかけた。

(もー…)

秋の夜風のおかげで だいぶ顔の熱がひいてきた頃、
いつの間にか家に着いていた。


私は赤司くんに向き直り、

『今日は有り難うございました。
赤司くんのおかげで、最近、毎日がすごく楽しいです…
本当に、感謝しています。』

と伝えると、赤司が下を向いて 無言になったので

『…?赤司くん?』

ちょいちょいと手招きをされたので寄ってみると、
スッと綺麗な顔が私の耳元に
近づいて、

“僕だって、きみのおかげで
毎日が楽しくて仕方ない”

と囁いた。
…甘く溶けるその声に思わず
自分で耳を覆った。

私に向かって すこし、寂しそうに微笑むと

“また明日”

と言い 来た道を戻っていった。


家の中に入るため
鍵をあけようとしたその時。


「すみれっ…

と、呼んでもいいだろうか…?」

と帰ったはずのあなたが
そこに居て。

あなたは私を腕の中に引き寄せて
優しく抱きしめた。

私はクラクラとめまいがしそうな
ほどにあなたに溺れながら、

小さく“はい…”と返事をした。

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