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□5 甘いひと時は一瞬に過ぎ
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昇降口につき、
赤司が折りたたみ傘を開いて

“どうぞ”

と優しく微笑むので

『お邪魔します…』

と遠慮ぎみに傘の中に入った。


「家はどこらへんだい?」
『〇〇町の△△アパートです…』
“あぁ、僕の家のすぐ近くだね”
ふっ と微笑まれた。


雨は思っていたよりも、
どしゃぶりで、小さい折りたたみ傘では かなり密着しないと
濡れてしまいそうだった。

しかし、すみれは
同じ傘に入っているだけで
いっぱいいっぱいで、そんなことできるわけがなく
少し離れて歩いていた。

「吉田さん。
…もうちょっと近づいてくれないと 濡れてしまうよ?」

と言いながら、
ぐいっ と肩をひかれた。


突然のことで 少しだけ赤司に
もたれかかる体勢になり、

ふわり と赤司の香りが
鼻をかすめた。


『す、すいません…‼』

慌てて すみれは
赤司から離れた。

(あ、赤司くんって…
心臓に悪い…っ‼)

すみれは
ドキドキし過ぎて
呼吸もままならない状態だった。

「そんなに遠慮するな。
もう少し近づかないと 濡れて風邪をひいてしまうよ?」

と妖艶に笑うので

“わ、かりました…”

と、ほぼ投げやりで
彼に従うことにした。
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