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□2 桃色に満たされて
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翌日。私は自分でも分かるくらいに舞い上がっていた。
昨日の夜なんて ドキドキしすぎて寝ることなどできなかった。


瞼を閉じれば あの時のあなたの優しげな微笑みがすぐ現れて。
頭の中が桃色に染まっていくようだった。

もう眠るどころではない。
おかげで少し目の下に隈ができてしまっている。


(あぁ…赤司くん、今日も図書室来るのかな…)

そんなことを思いながら、朝食の準備を始めた。


すみれはアパートに1人暮らしだ。 もともと母子家庭で、
自宅から遠く離れた帝光中に通うため、お母さんが一生懸命働いて仕送りしてくれている。

すみれは、そんな母にとても感謝して生活していた。


『よし、できた…‼』


今日は早く起きた(というか寝れなかった)ので、
少し朝ごはんが手の込んだものになった。
肉じゃがに、豆腐とわかめのお味噌汁、ほうれん草のおひたしと、
質素だが、我ながら
“美味しそうだ”と思った。


『いただきまーす』

1人で食べるご飯は少し寂しいが、この暮らしを始めてもう1年以上経つので、慣れてしまった。


『…ごちそうさまでした』

手早く片付けや身支度をすませて
いつも通りに家を出た。


ドアを開けると
外は秋風が心地よくて
心がふわふわ弾んだ。


(多分、秋風のせいだけじゃない。)
今だって頭に浮かぶあの時間。


すみれはいつもより
軽い足取りで通学路を歩いた。
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