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□愛しさが溢れて
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本当の意味で“心が通じた”日から
1週間が過ぎた。
赤司くんはあたしに対して
冷たく接することはなくなり、
幸せな毎日を過ごしている。
…だけど、あたしには
新たな悩みが出来ているんだ。
『ちょ、赤司、くん…っ
ん、ぁっ ここ、学校…っ』
「もう下校時間はとっくに過ぎているし、部員は全員帰った。
…誰も見ていない。
可愛すぎる君が悪いんだ」
ちゅ。と耳たぶにキスをする赤司くん。
──凄く、愛おしそうな瞳であたしを見ていた
が、
にやりと口角をあげている。
(も… あたし、耳弱いのに…っ!)
じわり と耳が熱い。
もう無理、といったように
胸板を押して抵抗するが、
…やはり男と女。力がかなわない。
──そう。あたしの新たな悩みは、
“赤司くんのスイッチが入ると
ところ構わず触れてくるようになった”
ことなのだ。
(確かに、『冷たくして欲しくない』とは言ったけど、…
こんなんじゃ あたしの身がもたない…っ)
耳への刺激にぞくっとして
ぼーっと そんな事を考えていると
赤司くんは 隙あり といったように
ちろ と耳たぶを舐めてきた。
『きゃ!?
や、ぁ あか、しくん…
耳、やめ、…っ』
「…その声、“もっとして”って言ってるように聞こえるんだけど。」
…妖艶な表情に息が上がる。
『そこで、ひぁ。
しゃべんな、ンッ い、でぇ』
びくびくと全身が震える。
その反応に赤司くんは気をよくしたのか、綺麗な骨ばった手があたしの首すじに触れた、…そのとき。
「やっべーっ
忘れ物 忘れ物…!」
──ドタドタとこちらに向かって走ってくる足音が聞こえてくる。
その音にぼんやりとした意識がハッとわれに返った。
(だ、れ…!?
やばい、こんなの見られたら…っ)
今 2人は息が上がった状態で
制服は乱れ、いかにも“いかがわしい事をしていた”のを物語っている。
(どうしよう。
絶対、こんなとこ見られたら
噂が広がっちゃう…!隠れないと…っ)
パニックで身体が動かない。
すると赤司くんがすっとあたしの腕をひっぱって
「こっち。」
と優しく耳元で囁いた。
──「ふぅ…あったあった。
よし、かーえろっと」
隙間から様子を伺うと、
やって来たのはバスケ部員だった。
忘れ物を見つけたのか、それをバックの中にしまっている。
…というか、
(狭い…っ!!!)
赤司くんにひっぱっられた先は
部室のロッカーの中。
…2人で入るのには狭すぎる。
あたしはギュッと目をつぶって
ドキドキと心臓が加速するのを
抑えようとしていると、
後ろからふわっと抱きしめられた。
「…名無しさん、凄く いい匂いがする。…なんか、興奮 するね」
『それは赤司くんだけ、…っ』
小声で爆弾発言に抗議する。
(腕が… 足も…っ!)
身体が密着して、
もうどうにかなりそうだ。
ロッカーの向こうでは
バックに入れ終わったのか、
スタスタと部室から離れていく足音が聞こえた。
(ふぅ… とりあえず、良かった…)
安心して肩の力が抜ける。
さっさとロッカーから出ようとするが、その手を掴まれ、身体を更に引き寄せられた。
「……しばらく、ここで いちゃいちゃしようか?」
…耳にあたる熱っぽい吐息と
甘く脳内まで響く声。
──こうなったらもう逃げられない。
( あぁ もう。)
“ちょっと 触れすぎですよ赤司くん。”