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□心の天気は
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(もーっ こんなときに、
委員会で遅くなるなんて…‼)

名無しさんは、
新学期を迎え、クラスの学級委員長を務めることになり
今日は学年での顔合わせがあった。

1人1人が丁寧に自己紹介をしていく中、名無しさんは、他のことに気が散っていた。


(雨、すごっ… 風も強いし…)


…そう、天気が大荒れだったのだ。


朝はとても天気が良かったのだ。

天気予報では

“午前中は多くの所で晴れの予報ですが、午後から強い雨が降るでしょう”

と言っていたが、
名無しさんは、家の窓から空を見るかぎり、雨は降らないだろうと思って
傘を持ってこなかったのだ。


(やっぱ持ってくるべきだったなぁ)


昇降口から見る、 あまりの雨の激しさに、朝の自分を後悔した。

“とりあえず、少し弱くなるまで待ってみよう…”

そう思い、1人 雨を見上げて
ため息をついた。

名無しさんは、目を瞑って雨の音に耳を傾けていると



「……名無しさん?」

後ろから男子と思われる声をかけられ、

“まだ自分の他にも人が残っていたのか”

と驚いて振り返ると、
そこには学校の有名人である赤司がいた。

『…⁉ なんで、私の名前…っ』

…そうなのだ。
名無しさんと赤司は同じクラスという訳でもなく、接点などまったく無かったので、
こんな凡人な私の名前を知っていることに、とても驚いたのた。


赤司はそんな私に クスッ と笑うと


「きみ… さっきの顔合わせで自己紹介していたじゃないか。

僕、きみの隣に座っていたんだけど?」


と言われ、
まったく赤司に気付かず、上の空でいた自分が恥ずかしくなった。


(この赤司が、隣にいて気づかないなんて… 私って…)


思わず、がくりと肩を落とした。


赤司はそんな私を見て
またクスクスと笑い始めた。


一通り笑い終えた赤司が、

「さて、名無しさん。
きみは傘を持ってきていないようだし、僕の傘に入っていかないか。」

赤司は優しく

“笑いすぎてしまったお詫びに”

と付け足した。

『えっ、いいのっ…⁉』


名無しさんは、思いがけず
幸せな体験をすることができて、

朝の自分にちょっぴり感謝した。

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