その少女、即ち
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「………神田殿、私の顔に何か付いておるのだろうか?」
ガタンゴトン
揺られる汽車の中、向かい合わせに座った神田がじっと自分を見てくる事に耐えられなくなり名無しさんは思わず問いかける
意識が戻ってからずっと謝罪と感謝を神田に伝えているのだが、返ってくるのは「ああ」という一言のみ
今の問も聞いてるのか聞いてないのか返事は同じものだった
「…………」
一方そんな神田は名無しさんの事を意識半分に見つめながら一昨日のコムイとの会話を思い出していた
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病室を出てから電話とゴーレムを接続し、教団へと繋ぐ
名無しさんは今病院にいる事や詳しい症状等、伝えなければいけない事があったはずなのに、そんなのどうでも良いと単刀直入に「こんな朝早くからどうしたの?」というコムイの科白を遮って抱いた疑問を問うた
「っ!」
電話越しにコムイが息を呑み込んだのが伝わってきた
何でそう思うの?と逆に問い返してきたコムイの声は強ばっている
神田は事の経緯を話し、答えを急かす
何故赤の他人にここまで拘っているのか
自分の気持ちが分からず、霧がかったようにモヤモヤする
そのモヤモヤは消える事無くどんどん積もり、濃霧となって更に神田の心を覆い隠した
もしかしたら
もしかしたらコムイの答えによってはこの霧は晴れるかもしれない
どんな答えを望んでるのか自分でも分からなかったが神田はそんな事を思った
「……そっか
うん、そう、名無しさんくん、いや名無しさんちゃんは女の子だよ」
確信となる決定打が返ってきて神田は瞠目した
頭の片隅では分かっていた
しかし何処か現実味が無く、事実を中々呑み込めない
「…………」
「でも彼女は時が来たら自分から話すって言ってた
だから神田くんもこのまま気付いてない振りをしてあげてくれないかな?」
何で俺がそんな事を
正直そう思った
人を気遣う気等さらさら無いし、彼女の過去は自分に全く関係無い
だが口を衝いて出たのは了承の返事だった
霧は未だ靉靆したままだ