その少女、即ち

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「よし、じゃあ教団内を案内するね!」


椅子から立ち上がったコムイは名無しさんの肩を押しながら部屋を出る


音符が飛び交っていそうな程のルンルン具合だ


「本当は皆大浴場を利用するんだけど、君はそうもいかないからね〜
まずは部屋に案内するよ」



幾つかの階段を登り、入り組んだ道を進み、ようやく目的の部屋まで辿り着く


正直な所覚えられる気がしないと名無しさんは不安げに辺りを見渡す


何だって異国の建物は縦に長いのかと思わずにはいられなかった



「この部屋にはトイレとバスタブもあるし、他の部屋より少しだけ広いんだ
はい、これは部屋の鍵だから無くさないでね?」


コムイから受け取った鍵で早速部屋に入る


中は三部屋構成で、どうやらその内の一つが浴室らしい


他の二部屋は六畳と四畳半程だろうか?家具は広い方の部屋にだけ机とベッドが置いてあった



「あ、そうだ
これで君の身体を採寸して欲しいんだった」


部屋を眺めていると何故か手渡された巻尺とプリントを不思議そうに見つめ、目線で何かと問いかける


コムイはふふんと笑い、右手の人差し指を立て顔の横に持ってくると眼鏡をキラリと光らせながらしたり顔で話し出した


「団服を作るのに君の身体のデータが必要なんだ
何時もは科学班の誰かが測るんだけどね
勿論男女共に同性の人が担当してるんだけど、君だけ担当が女性だったら皆から不信に思われちゃうでしょ?
だから部屋で採寸してきて欲しいんだ」


この男はやはり食えん、名無しさんは再び思う


行動は一見不真面目なのに言ってる事は全て的を得ていて、誰より人を想っている事が分る


そのふざけた仕草は照れ隠しやそれを悟らせない為かは定かではないが、この男の凄さを名無しさんは改めて実感する
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