その少女、即ち

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「すまない、黒の教団へ通じる地下水路とはここの事だろうか?」



突然掛けられた声に見張り番はハッとする


普段ならエクソシストや探索部隊(ファインダー)が帰還する時は無線ゴーレムに通信が入るのだが、今日は特に何も来ていない


入団希望者も最近では多くない為、暖かい陽気も相まって丁度ボーとしていたのだ



「…すまん、こちらで合っているのか?」


返事が返って来ない事を怪訝に思ったのか、不思議そうな顔をした少年は再び問い掛ける


大きく、やや切れ長の目が少しばかり細まった



「…!!
な、何用でしょうか?」


ようやく思考が追いた見張り番は少年の問に一拍ズレながらも答え、改めて目の前の人物をまじまじと見つめた


その少年は一見男か女か曖昧で、恐らく10代後半か20代前半なのであろうが、アジア人らしい童顔が彼をより幼く見せている


しかし、言葉遣いや凛とした立ち姿、醸し出す雰囲気が幾らか大人びて見えた


見張り番が男だと認識した理由は服装にあり、一目で質の良い物と分かるフロックコートは少年の身体にピタリと馴染んでいた


色味のあまり無い格好だが、下で一つに纏めた長い黒髪だけが風に靡いてキラキラと輝いていた



「クロス・マリアン殿の紹介で来た
この手紙をコムイ・リーという者に渡して頂きたく存じる」


「分かりました、少々お待ち下さい」



少年が鞄から取り出した生成色の便箋を受け取ると、そこには確かに『From Cross』の文字


見張り番はこちらの様子を伝えるべく、無線ゴーレムに話しかけた


「コムイ室長、少々お時間よろしいでしょうか?」


「はいはーい、どうしたの?」


「?!」


少年は目を見開く


先程からパタパタと飛んでいる物体を不思議に思っていたが、まさか離れた相手と話が出来るとは



「クロス・マリアン元帥からの紹介状を持った少年がこちらにいるのですが、お通ししても良いでしょうか?」


「クロスから?!
あの人生きてたのか…」



少年が異国には未知の物が多いな、などと呑気なことを考えている間に話がどんどん進んでいく


最終的には水路を進み、エレベーターなるもので上に上がってから、表門で身体検査を受けるというとても回りくどく面倒な事をする羽目になってしまったのだった
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