*。小説

□ウサギさんは今日も元気です。
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休みの日だというのにも関わらず、アラームの音が、慌ただしく部屋に鳴り響く。


「んー…あー、用意せんと…」


覚醒しきっていない頭をフル回転させながら、今日の行事を思い出し、寝起きで重い体を起こす。


「おい、聖。朝やでー、はよ起きんと遅刻しちゃうやろ」


衣梨はすぐ様、すやすやと隣に眠っている聖に声を掛ける。


「んー、えりぽ…みぅき、まだね…る…」


「何寝惚けたこと言ってると?ほら、早く起きるっちゃん…!」


「やーだー…!」


嫌がる聖を無理矢理抱き上げると、いつもは元気にぴょこぴょこと動いているウサ耳が、ペタンと垂れ下がってしまっている事から、よほど眠いのだろう。


「あんま寝すぎたら、亜佑美ちゃんのとこ連れて行かんけんね。」


「あゆみちゃ…!」


いやいやと駄々を捏ねて衣梨の服にしがみついていた聖の顔がガバッと勢いよく上げられる。"亜佑美ちゃん"というワードに反応したのか、単純なウサギだなぁと思わず苦笑してしまう。


「ほら、亜佑美ちゃんに会いたかったらはよ用意し」


「うん!えりぽん、みずきすぐよういするね」


そう言うと、聖はパタパタと支度をする為にクローゼットのある部屋へと駆けていった。




*.


まぁ、あの後色々あったっちゃけど、なんとか目的の場所に到着した。
呼び鈴を鳴らすと、はーいと直ぐにこの部屋の主の返事が返ってきた。


「こんにちは、皆さんもう来てますよ、どうぞ上がって下さい!」


にこにこと笑顔のさくらちゃんが出迎えてくれる。どうやら衣梨達は、一番最後に来たようだった。


「ん、お邪魔します。ほら、聖も」


「さくらちゃ、おじゃましますー」


「はい、ゆっくりして行ってくださいね?」


「お、亜佑美ちゃんやん。久しぶりやね」


そう言って聖の頭を撫でるさくらちゃんの後ろに隠れ、さくらちゃんの足に尻尾を巻き付けている亜佑美ちゃんの存在に気が付き、声を掛けた。


「あゆみちゃ!あゆみちゃー、あゆみちゃー!」


亜佑美ちゃんが大好きな聖は、一目散に亜佑美ちゃんに駆け寄り、嬉しそうに笑いながら耳をぴょこぴょこと動かしている。


「にゃ!?…ふしゃーッ!」


「あゆみちゃ!?」


あまりにもテンションが高過ぎる聖を鬱陶しく思ったのか、亜佑美ちゃんがここぞとばかりに威嚇している。まぁ、そりゃそうか。


「あー、はいはい石田さーん。譜久村さんを威嚇しちゃダメですよ?ウサギさんは、傷付き易いんですから。」


「お、おだぁー…おだぁー…」


「あゆみちゃ、あそぼー」


威嚇を続ける亜佑美ちゃんを、飼い主であるさくらちゃんがひょいっと抱き上げ宥める。すると聖は、悪びれる様子もなく、ぴょんぴょんとジャンプして、高い位置にいる亜佑美ちゃんに手を伸ばしている。


「こら、聖。あんまり構ってちゃんやと、亜佑美ちゃんが可哀想やろ?」


ぴょんぴょんとジャンプする聖を持ち上げ、軽く注意すると、わかったよぉ…しゅんっと耳を垂れ下げながら残念そうに頷いた。



「さぁ、皆さん待ってますから、リビングに行きましょうか?」


さくらちゃんの言葉に頷きながら、衣梨達はリビングに足を進めるのであった。

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