タロット ガッシュ

□15 悪魔
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悪への誘い。

タロットの別名は「悪魔の絵本」。
大変に魅惑的なネーミングですよね。

ガッシュの話の元ネタの一つ「アッピンの赤い本」は、昔々スコットランドのアッピンで、羊飼いの孤児を召使いにしようとした悪魔が、逆に契約の本を奪われたという話です。
持ち主に不思議な力を与える「赤い本」には、悪魔の真名が書いてあるとか。

悪魔のカードにあてはめるのは、ただの敵役じゃなくて悪い魔物。

この話の悪役キャラは、悪びれない。
どんな酷いことをしても、悪いと思わないで平然としてたりする。
王を決める戦いでは、どんな魔物でも勝てば王様。そこに善悪はない。
意地悪、嫌がらせ、嘘つき、盗み、脅し。
悪い奴は、王になるために「悪」を選ぶ。

そんな悪役キャラで、最低最悪の魔物と言われたのがゾフィス。
黒い本の読み手シェリーの宿敵。

ゾフィスは悪の策略家。
自分の本の読み手も、千年前の魔物達も、心を操ることで支配する。

石版からの解放、本来とは違う人間を読み手とするための心の調整、月の石への依存。
人間の意志を奪うことで魔物の行動を縛り、一対多数の圧倒的な戦力差で他の候補者を倒させる。
相手を見極め、策を弄し、罠を張る。

彼は、慎重で狡猾な悪の魔物。
「楽しみながら王になろう」


ゾフィス

心を操る悪意。

タロットには蝙蝠の羽と山羊の角を持つ悪魔が描かれる。その意味するものは欲望と支配、そして悪意。

悪役ゾフィスは人の記憶を覗き、心を操る力を持っている。

悪魔の中でも人の姿に近いものほど悪辣だというけど、白磁でできた端正な人形のように性別不明(彼女だと思ってたよ、ずっと!)な風貌といい、蛇のように縦に切れた瞳孔といい、嘲笑うゾフィスはまさに悪の化身といったところ。

それに対して、本の読み手のココは、正しく清らかな心の持ち主。
貧しさから理不尽な扱いを受けても耐え、優しさを失わず、自分の未来を切り開こうとする。親友のお嬢様の立場も財力も頼らずに。
彼女は当然、ゾフィスを拒む。

「だが、ココは戦いや力に興味を示さなかった……
 だから少しだけ心を解放した。人を傷つけることや物を破壊することが楽しくなるようにね」

彼は、目的のために手段を選ばない。
というか、むしろ悪を手段として選ぶ。
本の読み手が協力しなければ、その心を歪めて支配する。ゾフィスの求める心の力は、妬みや怒り、憎しみといった負の感情が源だから。

「表の顔はニコニコしていても、裏側では深い憎しみを抱いている。それが人間だと思いましたが?」

覗けば、誰にでもその闇はある。
ゾフィスにとって、心の深い奥底に暗く澱んで蟠るそのものこそが人間の本質。

ゾフィスは王を決める戦いを、面白いゲームだと言う。魔物と組む人間は力を得てとりつかれ、互いに戦い傷つけあう。その醜い心を堪能できると。

それにしても彼の悪魔ぶりは、勝負に負けても変わらない。

「ココに幸せは戻らねえのさ」

ゾフィスの本が燃えても悪のココの記憶は残る。やさしいココだからこそ良心と罪悪感が心を苛む。

「コレはオレの最後の仕返しだ」

その意図は「嫌がらせ」以外の何物でもない。まあ元々、悪魔は神様への嫌がらせで、人間を悪へと誘うのですが、彼はその行為がすごく自覚的だ。

最後にブラゴの脅しに屈するものの(悪役の末路として、恐怖に震える小者らしさも含めてね)、悪意の本質を体現したキャラですよね。
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