タロット ガッシュ

□9 隠者
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孤独な老賢者の知恵。

暗闇のなかで、杖を持ち灯火をかかげている老人のカード。
頭巾のついたマントをまとっている修道士は俗世から離れて探求する人。

このカードから、まず思いついたのは、サンビームさん。
僧侶のように、事の真偽を見極めたり、心の奥を見据えたりといった力のある人。

あとは、暗闇と孤独のイメージからデュフォー。
すべてを見通す灯火、アンサートーカーの光を額にあてて夜の闇を覗きこむようなイメージが浮かぶ。
素敵だけど、隠者ってもっと地味で堅実な方がいい気がしますね。

隠者は心理的にみると、父性の元型の老賢者でもある……というわけで、ここは高嶺清太郎をあてはめます。

ガッシュの恩人で、高嶺清麿の父。
物語の表に出てくることはないけど、大切な人。

この人が隠者らしいのは、孤独を厭わないところ。そして、どんな状況でも自分らしさを失わないところ。
誘拐された先で、子供相手に授業を始めるなんて普通はしない。
森で助けたガッシュを、少々変わり者だがとても良い子だと可愛がる心の広さ。
そして赤い本も、自分に読めなくても清麿なら読めるだろうと判断する賢明さ。

いかにも学者らしく浮き世離れして見えて、その実、世の中や人の心の機微もよく知っている。

タロットの隠者は「賢明」の象徴とも。
本当の意味で賢い人なのだと思う。


高嶺清太郎

孤独を見つめる人。

隠者は俗世から離れた修道士です。そして、高嶺清太郎は大学教授。自らの学問を探求し、教え導く人。

彼は物語にはほとんど出てきません。隠れてます。が、重要です。

タロットの隠者が意味する孤独。
本来、孤独は悪ではない。
他者から切り離されると、人は自分の内面と嫌でも向き合う。

それは、楽しくはない。寂しく辛いもの。己の弱さ、醜い感情も突きつけられる。自問自答から自己嫌悪、自己憐憫、そして自縄自縛に陥ることがほとんどで。

「おまえに清麿の何がわかる!?」
「清麿は悪くない! だから私は清麿を助けに来たんだ!」
「清麿は、好きで天才になったわけじゃないんだぞ!」
「清麿が変わったんじゃない!
清麿を見る友達の目が変わったんだ!」

ガッシュが叫んだのは、父の言葉。

清麿が辛かったのは孤独ではなくて、心ない言葉に傷ついていたからだと思う。
清太郎がガッシュを贈ったのは、慰めるためじゃない。また立ち上がるためだ。

ガッシュと鈴芽、友達を助けるために。

自分の孤独を否定するのではなく受け入れ、それでもなお、誰かのために手を伸ばすこと。

隠者は灯りを持っている。
あれは自分を照らすものではなくて、遠く離れた迷い人を導くもの。

幼子を導くのは親。
暗闇の先にあるものを知る賢い隠者。
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