How to love

□出会い
1ページ/3ページ


連れてこられたのはロスロリエンの中心部にあるカラス・ガラゾンという都市。
隊長さんが親切に教えてくれた。


「綺麗…」

開いた口が塞がらないとは
まさにこのこと。

目の前に広がるは高くそびえ立つ木々、そこから伸びる大きな枝が
アーチ状で架け橋となっている。

月の光で葉は銀色に輝き、下にいる者全てを照らしていた。



「うお!」

ボーッとしていると、目の前で止まった人に気付かずそのままぶつかってしまった。

「ごめんなさっ」

「ガラドリエル様、お連れしました」

そのまま腕を引かれ、差し出すように前へ押された。

次に視界に入った女性を見て、これでもかというほどナナシは目を見開く。

絹の様にキメ細かい金色の髪。
透き通るような白い肌。
星の様に輝き、全てを見透かしている
ような鋭い瞳。


「び、美人過ぎる…」

ポツリと呟くナナシに微笑むその女性こそが、ロスロリエンを統べるガラドリエルだった。


「そなた、見たことある容姿だ…
以前会ったことがあるような…」

ガラドリエルの後ろからゆっくりと
現れ話し出したのはガラドリエルの旦那様であるケレボルン。


「見間違いじゃないですか?
私ここに来るの初めてですし」

「ケレボルン様、まずこの者はエルフ
という存在を知らないようです」

「なんと…!」

驚くケレボルンと、それでも平然としているガラドリエル。

「この世界でエルフを知らぬ者が
いたとは…」

いや、多分住む世界自体が違います
とは言える訳もなく、頭を掻きなが
ら苦笑するしかなかった。


「そなた、名は?」

「え?…ナナシ、です」

突然の質問と初めて聞くガラドリエル
の声に驚いて裏声になったナナシは、恥ずかしさで顔を手で覆ってしまった。


「ナナシ…顔を見せて」

ガラドリエルの手がナナシの手を包み顔が見えるように優しく退かす。



「ナナシ…妾はそなたを知っている」




その言葉にその場にいた3人は驚きの声をあげた。

「し、知っているってあの、私は
会ったことないと思うんですけど…」

「もちろんそなたとは会っていない」

分からないとナナシは首を傾げる。


「そなたの母よ。1度この地に来ているはず」


「!」

「おお!思い出したぞ!数十年前に
異世界から来た娘!
そなたはその娘にとても似ているものだったからつい会ったことがあると」

ケレボルンは懐かしむようにナナシを見た。

「そんな娘がいたのですか?」

「ハルディアはその時遠征でいなかったのではなかったか」

「なるほど」



お母さんこの人達と会ってたのか
やっぱり実話だったんだ…
てか隊長さん、ハルディアって名前
なんだ、へー



「ナナシよ」

「はい?」

「この地にそなたの父がいます。
挨拶すると良い」












「んんんんんんん??!!!」


「ガ、ガラドリエル様!この者の父がロスロリエンにいるとは一体?!」

「そのままの意味よ。ナナシの母は異世界からこの地に降り立ち、ロスロリエンの1人のエルフと恋に落ちたのだ」

ケレボルン様も隣で驚いた顔してますよちょっと


「しかし、2人の困難は大き過ぎた。
種族も違えば、住む世界も違う。
共にいることなど叶わなかったのだ。」



「だがナナシにエルフの血が流れているのも、また事実」


「エルフの血…ですか」


「そなた、自分の耳をちゃんと見たことがあるか?」

ケレボルンに言われ、手で耳を弄る。
隣にいたハルディアは横目でその様子
をじっと見ていた。


「う〜ん、そこまで気にしてはなかったんですけど」

「少しばかりとんがっている様に見えるが」

「そうなんですか。へー」

ハルディアにそう言われるがナナシはしっくりくるわけでもなく特に気にする素振りを見せなかった。


「でも何で私がここに来ちゃったんで
すかね?」

「誰かの強い願いがもたらしたのでしょう」

「誰かって、誰?」

「それはまた後日…
ナナシ、暫し休まれよ。まずは疲れをとりなさい」

「ハルディア、ナナシを部屋まで案内してやってくれ」


ケレボルンの命に軽く頭を下げたハルディアは、行くぞとだけ声をかけた。
ナナシはガラドリエルとケレボルンにぺこりとお辞儀をしてハルディアの後ろをついて行く。










「やはりそっくりよな、瓜二つだ」

「しかし、あの者にもよく似ておりますよ」

「会うた時、どんな反応を示すのやら」

「楽しみですね」

暖かく微笑む夫婦がそこにはいた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ