Long story

□00:はじまり
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「じゃあ行ってくるね!!」


翌朝、畑仕事の手伝いが終わると
銀蔵は稽古をつけてもらうと
天然理心流の道場へ向かって行った。


昨日言われた通り
名無しは家で
母の手伝いをしていた。



母に頼まれていた洗濯を干し終え
一息ついていると
やはり思うのは兄の事ばかり。



遊びたい年頃の名無しにとって
遊び相手の兄がいないのはとても寂しかった


(兄上は今頃、刀の稽古をしているのだろうか…)


兄が道場の事を楽しそうに話している姿を思い出す名無し


(近藤先生…どんな人なんだろう。)




そんな事を考えていると
自然と足が動き兄のいる道場へと向かっていた。













「もっと肩はこう!!」


道場の前までくると中から
厳しそうな男の人の声に続くように
数名の恐く生徒であろう声がしていた





名無しはその声のする先へ
足を進めるとある建物についた


中からは先程の男の声がしている


(きっとここに…)


どこか覗ける所はないだろうか、と
辺りを見回すと小さな出窓を見つけた


その窓の下まで行き
窓の柵に手を掛け、背伸びをすると
わずかだが中が覗けた


(兄上は…いた!)


銀蔵はちょうど同い歳くらいの
少年と試合をしているところだった。

木刀と木刀がぶつかり合う音
攻防を繰り返す両者
名無しは初めて見るその光景に
胸がドキドキしていた


「すごい、かっこいい…!」


「おいガキ、そこで何してやがる」


後ろからいきなりかけられた声に
驚き柵から手を離してしまい
名無しは堅い地面に落ちてしまった。

「大丈夫か?」

声の主に顔を向けると
そこにいた顔に見覚えがあった。


「ば、ばらがき…」

「あん?おめぇ…っておい!!待ちやがれ」


名無しは男の横をすり抜け
一目散に逃げ出した。

「おぉ!歳来てたか
ん?どうかしたかそんな所で」

「あぁ勝っちゃん…いや何でもねぇ」



その時の出会いが後に名無しの
運命に大きく変える事となる
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