中編

□物語
1ページ/1ページ

ねぇ...一度でも運命の赤い糸を信じたことがある?

この人が運命の人だって思える人にもう出会っている人もいると思うの

この物語は私が運命の人を見つける話

その先は私にもわからないけどね


私は半魚人の個性のお父さんと歌姫の個性を持つお母さんの元に生まれた

私の個性は人魚

地上にいる時はただの人間だけど2秒間下半身が水に浸かると足が尻尾になって人魚になる

といっても私の個性は水の中を自由に泳いだり呼吸ができるだけ

お魚さんみたいなものね

お母さんの美声を引き継いで私もよく綺麗な声って言われるの

紹介はこんな感じでいいかな?


それじゃあ、少し物語を話そうか

これは本当にあったお話


―――

コミカルな音楽に合わせてお腹のそこから出す声

「素晴らしい!」

「君の声はまさに天使だ!!」

そう言われた少女はどんどん成長してやがて誰もが知るような歌姫となった

だが...少女はその声を利用されてばかりの日々を送っていた

少女が一言発せばお金が飛び交い

少女がため息を吐いただけでも周りからは歓喜の声が上がった

幸か不幸か、素晴らしい個性を持って生まれた少女はいつしかもてはやされるのが嫌になった

やがて少女は喋らなくなり、あんなに好きだった歌も歌わなくなった

それでも尚少女の歌声を聞きたい者達は意地でも少女に歌を歌わそうとした

その手段として少女を監禁しようと企んだ

それからというもの少女には懸賞金がかけられ身を追われるようになった

遂には生死を問わずコレクションにしようとするものも現れてしまい

彼女は四六時中命を狙われてしまうようになった

外国にすら逃げる場をなくし親にまで命を狙われる始末となった彼女は声を出すことが出来なくなりひたすら逃げることしか出来なくなった

昼夜は周りを伺いながら逃走し朝は静かに眠る

そんな生活をしながら少女が自分の声を忘れた頃

ある村にたどり着いた

それはとても小さな村だった

地図にすら乗っておらず誰も知らない村

少女は黒いマントを取り水を飲もうと湖に向かった

すると

「......君は...?」

湖の中には同じ年代ぐらいの少年がいた

「......」

何も答えられずにいる少女に少年は優しく笑いかける

それが少年と少女にとって運命の出会いだった

少年は少女を自分の家に匿い

村の住民には話さずに数年が経った

少年は少女の声が出ないことを知り

少女は少年の個性が半魚人であることを知った

少年の個性は水の中にいる時だけ足が尻尾になり水の中では自由に泳ぎ呼吸ができることも同時に教えてもらった

少女が大人の女性になった時男は言った

「君の声を取り戻そう」

男と出会った後2人は女の声を取り戻そうと毎日声を出す練習をしていた

だが今まで一つの音すら出すことが出来なかった


男はそんな女にそう告げて女の手を引いた

辿り着いたのはふたりが出会った場所だった

「今から僕はこの湖の底に3年間行かなきゃならない...3年間...君は僕のことを待っていてくれるかい?」

男は唐突にそう言った

女は困惑し三年間という長い間ひとりになることを怖がった

「絶対に村の人々に見つかってはいけないよ。」

女が首を振る前に男はおでこにキスをして切なそうな顔で湖の中に沈んでいった

それから女は男の言いつけを守りひたすら見つからないようにひっそりと生きた


次へ物語2

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ