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□思い出したくない過去
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「よしっ…………」

綺麗な桜の木の下を歩き、ある高校の目の前で止まる
再度深呼吸をして、新しく通う高校の門をくぐる


「頑張っていかなきゃ……」


私の個性が発見されたのは、物心のついていない時だった
私の個性を発見する代わりに大切な人を失った


ある日、お父さんと目を合わせるとお父さんは石になった。私がお父さんを石にした

ただそれだけが、私の中のお父さんの記憶だった

そう…とても最悪で思い出したくもない事だった

私の個性がメドゥーサだとわかった頃、お母さんは心を閉ざしていた

最愛の父が私のせいで居なくなった

父か私か…お母さんがどちらを取るかなんて一物瞭然だった

「ねぇ結愛…私はね…あなたを…………」


「…………………………………あのー……?どうしたんですか?」

「…………………………大丈夫ですか?」

「へっ?あっ……ごめんなさい。考え事をしていて…」

「あっ、邪魔してごめんね…A組の人かなって思って」

私が昔のことを思い出していると、モフモフした男の子が私に話し掛けてきた

とても震えながら話してるけど…大丈夫かな?

「うん、私A組だよ…君も?」

「あ、僕もA組だよ。緑谷出久って言うんだ」


この子もA組なんだ…仲良くなれるといいな……


「緑谷くんよろしくね。私は輪蛇結愛って言うんだ」

「輪蛇さん、よろしくね」

緑谷くんはちょっとぎこちなく笑顔を向けてきた

「そろそろ入ろうか…」

私はドアを開けてなかなか教室に入らない、緑谷くんの背中を優しく押して一緒に中に入った

「机に足をかけるな!」

んっ?いきなり何?

ふと前の席を見るとなんだか危なそうな人達が騒いでいた

緑谷くんにあの人たち誰って聞こうかな…

「緑谷…」

「あ!そのモサモサ頭は!!」

私が話しかけようとすると、元気そうな女の子が緑谷くんに話しかけた

仕方ない、座るか……

私は座席表を見て、一番後ろの窓側の席に行く

あー……なんかさみしそうな席だな…

私は荷物を置いて静かに着席する

なんで私はここに来たんだろう…

少し窓を見ながら考える


「…………………………………で……ヒーローになれ……」

お父さんと将来の話をしたとき、私は何故かヒーローになりたくて…なんで思い出せないんだろ...

でも、私がここにいる理由は一つお父さんにヒーローになれと言われたから

その前後の言葉が記憶になくても

ヒーローになれ

この言葉だけが、今の私を支える目標だった

お父さんに言われたことを絶対に守るために…私は今ここにいる

これが私からのせめてもの罪償いだ

きっと…ヒーローになれば何かがわかる

私はその、何かのために生きていく

さぁ今日からまた…頑張らなきゃ……



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