小説

□只、俺で有るが為に
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『現状維持』



この間、俺は新しい道に入りました。まだ日も浅いので、現状、良いか悪いか分かりません。

気が付けば俺は、理不尽に大人に成りました。お金という点で。世間から見れば、まだまだ子供だと言うのに。
俺の歳まで生きていれば、誰でも通ってきた道だ。

大人と子供の境目って何だろう。二十歳からだろうか。物分かりのよいことだろうか。常識のある人間だろうか。
あぁ、考えるだけ無駄だ。時間はある様でいてないというのに。
時間は大切ですからね。

思えば、全て時間が解決してくれていた気がします。俺の努力が足りないのでしょうか。それとも、足掻いても無理と決まっていたのでしょうか。
大きな事故が起きたとしましょう。もし、そこで亡くなり、その家族、親族、友、その他諸々が泣いたとしましょう。その人達が亡くなったらどうなるのでしょう。きっと、教科書、ニュースなどに出てこなければ、忘れられるでしょう。

知りません。今までに亡くなった人なんて。

きっと俺も覚えられないのでしょう。皆そう。平等だ。

…なんて、まだ子供の俺ですからね。



『Mice』



「つまりお前は私を知らないと」

「ははは、そんなわけ。さっき言っただろう。『家族、親族、友、その他諸々』とね。いや、それ以上だ。腐れ縁というか、切っても切っても、いや、切れない。切れてしまえばお仕舞いだ」

「私のお陰か」

「何を言うんだ。切ろうとしたくせに

切れなかったくせに」

「でも、私のお陰だろ?今、此処にいるのはよ。今のところ、幸せなのはよ」

「…そーね」

「私じゃ考えられなかっただろうな。お前がそうなるなんて」

「…奇人?挙動不審?うんうん、そらそーだ。未来が分かったら、いや、物事が確実に起こるって言うのならさ。とっても、恐ろしい」

「…うん」



『Well Done』



あー、俺はある意味、可哀想な奴なのかもしれない。

変に暗くて自傷気味で、弱くて虐められてて、死にきれなかった、奴の、親友。家族。血の繋がっていない、保護者、役。

あいつが自殺使用とした時は、焦った。俺諸とも、皆消えちまう。誰かの記憶に残らなければな。

でも、お前は生きていたんだ。結局、最期の勇気が出せず、最期、最期、最後と、無理だった。優柔不断、冷静沈着。

「でも、私のお陰だろ?今、此処にいるのはよ。今のところ、幸せなのはよ」

そーね。
今のところ、調子良いもんな。
そっちの方が良い。晴れてて、暗くなくて、君がよく見える。



『Mouse』



俺は、前以上に明るくなった時、性格が変わった気がするんだよね。

…あぁ、いや、出てきたんだ。ずっと、頭の、心に沈んでた、俺の本心が、本性が。一人称も変わって、見た目も変わって、言動も変わって。ほぼ全てが変わった。
今思えば、認めたくなかったのかもしれない。

虐められて、暗くて、悲しくて辛くて、人も信じられず、人類の全てが、自分が、嫌いで、変わりたいのに変われなくて、死にたくて、死にきれない、情けない自分が嫌いで、ただただ、無意味に、生きてきた、自分、が。

…周りのことはよく分からないが、虐めって、どこにでもあるのかもしれない。

だからって、俺達のことを忘れるんじゃねぇよ。辛いんだよ。自分が虐められたくないからって、一緒に虐めて、必死に本心隠して、隠して、隠し続けるゴミが、人間の屑が、人の気持ちも考えられない奴が、人間をやってるんじゃねーぞ。今すぐ、その首を、

以前、進学して、俺を嫌ってた奴と同じ組になったんだ。
そこから、仲良くなって、罠かどうかも分からないけど、楽しかった。

今もなお、周りから聞こえる話し声が、自分への悪口ではないかと思う。
必死に、そうではないと、否定し続ける。

俺を壊して、壊し尽くして、もう壊れないほどになったけど、今は少しずつ、治っているのだろうか。

あぁ、俺をこんな風にした奴に、粛清、を。



『Mice』



「萎えるわ」

「せやな」

「今のところは、明るい。何時か曇って、雨でも降ってしまうのではないか」

「違う」

「ああ。出来ないと言ってしまえば出来ないし、出来ると言えば出来るんだ。俺はこれから、これからも、幸せになる」

「うん。なるよ、幸せに。

じゃ、また会おうぜ、俺」

「じゃあな。私」






只、私で有るが為に



俺が俺で有るが為。

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