【君想。】
□第1話
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事務所に所属してもう5年。
早乙女学園の作曲家コースを卒業した私は、林檎先輩を中心にいろんな人に曲を提供してフリーな感じで活動している。
そんな私なんだけど、実は恋人がいるんです。
その人とは…
「やっほー、お疲れちゃん。待った?」
「寿先輩!お疲れ様です。」
そう。今をときめくQUARTET NIGHTの寿嶺二さん。
きっかけは一緒に仕事をさせていただいたといういたってふつうな出会い。
そこから早乙女学園出身同士話が弾んで今にいたります。
「いつもの店でいい?」
「はい、大丈夫です。」
「…。敬語。」
あ、もう事務所じゃないから…。
「あ、ごめん。嶺二さん。」
嶺二さんとお付きあいしてもう1年ちょっと。
テレビで見る嶺二さんより、素の大人っぽい嶺二さんの方がやっぱりいいなぁ。
いつものお店に入って食事を頼む。
なかなか一緒に居られないからこうして時間が合ったとき、会えなかった時間分たくさん話をする。
「え?嶺二さんマスターコースの教官になったの!?」
「うん。早乙女学園からアイドルグループがデビューしたからね。」
そっか。シャイニング事務所は基本個人の活動になるから、QUARTET NIGHTくらいしか先輩がいないんだ。
「それでさ、そのグループの専属作曲家の後輩ちゃんがなかなか良い曲作るんだよね〜。」
チクッ
「そうなんだぁ。聞いてみたいな。」
「ST☆RISHって知ってるでしょ?その作曲家だよ。俺達と同じ、早乙女学園出身。」
チクッ
「専属かぁ。すごいな。」
私なんてフリーだし…。
「うん。すっごく良い曲作るんだよね。俺も後輩ちゃんの曲、歌ってみたいなぁ。」
ズキ…。
そのあとも嶺二さんはその後輩ちゃんの話しかしなかった。
なんで…?
私の曲を歌いたいなんて言ったことないのに。
今回は久しぶりに会えたんだよ?
他の女の子の話なんてしないで…。
ねぇ、嶺二さん。
好きだよ…。