うらなりデジャヴ Nozomu.K

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うらなりデジャヴ ○2○
望side

望「いたっ…」
西条に言っておきたいことがあって階段を駆け上がってた、はずなのに。
いま、目の前に起きてる出来事が理解出来ない。
ゆか「ごめん…っ!?」
西条も気付いたのか。
望「これ…どういうこと?」
さすがに誰だって驚くだろう。
俺の体が、俺の目の前にあって、俺という意識は俺の体の中にないんだ。
意味、わからへんよな。
ゆか「小瀧…?」
西条の中に、俺の意識がある。
簡単に言えば、俺はいま西条になってる。
西条はゆっくりと立ち上がり、ふらっと倒れかけた。
望「ごめんな…よくわからへんねんけど…」
自分が目の前にいるという不思議な感覚でおかしくなりそうだった。
いま、階段でぶつかって一緒に落ちた、それだけのはずなのに、体が入れ替わってしまったんだ。
ゆか「声も体も、小瀧だ…」
それでもなぜか西条はそこまで怖そうにしていない。
強がりの性格なのか、素なのか。
望「やばいな…俺…」
ゆか「私、俺とか言いません。」
西条がきっと睨みながら言った。
望「俺やって私とか言わへんねんけどw」
すると、西条はぷぅっと顔を膨らませる。
そんな顔が意外にも可愛くて、つい目をそらしてしまった。
俺、の顔だけどなw
ゆか「これ、どうやったら治る?」
西条の一言で我に返る。
望「もう1回落ちてみる…?」
俺は提案したけど、西条はふるふると頭を振った。
ゆか「飛び降りるのは嫌いなんだ、俺。」
望「よく言うね、小瀧も。」
こんな風に西条と2人で話してるなんて、五分前の俺は想像もしてなかったんだろうな。

ブー
俺の近くに落ちていたスマホが鳴った。
俺のだ。
いや、正確には西条のもの。
いまは俺のものだし、見てもいいよな。
ゆか「やめてっ!!」
望「はっ!?」
西条は俺の手をぱしっと叩いて、自分のスマホを取った。
ゆか「あーもう、ほんとやばい。」
さっきまでのポーカーフェイスもなくなり、焦りまくってる顔に変わる。
望「どうしたの?」
ゆか「…はぁ…」
西条は辛そうに目を閉じた。
ゆか「こうなっちゃった以上、仕方ないよね…とりあえず、家帰ってもいい?」
こんなに話す西条、初めて見た。
望「お、おう。」
ゆか「俺、家まで送るから。」
これが逆の立場ならものすごくいいんだけどな…w
西条が性格イケメンと知り、心の中で爆笑した。
俺が送ろうか、と聞いたが、方向音痴じゃないから地図だけ見せてくれと言われた。
ほんと、イケメンだわ…
そんな事もあり、西条とちゃっかりメアドを交換してしまった。

ゆか「ほんと災難だね、小瀧も。俺なんかと入れ替わっちゃって…」
帰り道、西条はこんなことを言った。
ゆか「うらなりちゃんと小瀧なんて関わりなかったのに、めんどくさくしてごめんな。でも俺、いじめよりもっと辛いことあるから。それを小瀧に味あわせるとか…」
いじめより、もっと辛いこと…?
望「別に、西条のことうらなりちゃんだなんて思ってないし、全然大丈夫やで?」
それでも西条はさらに顔を曇らせる。
ゆか「このメール見て。」
俺の前に差し出されたのはさっきひったくられたスマホ。
『早く帰ってこい
もし帰ってこなければどうなるかわかっているだろうな?』
え…
差出人は、母親と書いてある。
望「…っ」
ゆか「これがいじめより辛いこと。早く帰らないと小瀧的にも大変なことになると思うけど。」
淡々と言うその姿に少し寒気がした。
いつもこんな風にされてたらこんな風になってしまうんかな。
ゆか「西条ゆかの家族構成は母親と自分のみ。兄の大毅は三年前に他界、父はそれと同時に離婚。旧姓は重岡。家で兄と父のことは口に出してはいけない。母親との会話は、ありがとうございますと、ごめんなさいのみ。わかった?」
西条は全てを話しきったようにふぅとため息をついた。
望「おう。小瀧望の家族構成は父母姉。姉は7歳上で、俺のことが大好き。彼女もセフレもなし。いたって純情w」
最後が余計な一言だったらしく、きっと睨まれる。
西条ってほんと、笑わないよな…
ゆか「もうすぐ、家だから。私の部屋とかだいたいで考えて入って?別に見られたくないようなもんないし。」
それでも女子かとツッコミたくなったが、見た目が俺というのもあって口に出すのはやめておいた。
ゆか「それと、何かあったらすぐに連絡すること。気をつけてね。」
望「おう。じゃな。」
西条…いや俺の姿をした西条は、くるっと振り返って逃げるように去って行った。
ここが、そんなに怖いのか…
俺はもう1度気を引き締める。
よし、がんばれ俺。
がんばれよ、西条。

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