アルスマグナの後輩になる話。

□複雑な気持ちは、どう処理するのか。
3ページ/8ページ

みごとに踊りきった二人。
汗をかき息を切らしている。


「お疲れ。」


「うん。すっごい腹筋痛い。」



とっていたカメラを、確認する二人。



「あー、ここ超きつかったー!」



「ここなぁ、絶対言って欲しいよね」



「いい感じに撮れたね!」



「うん。結構いいと思う。」



「・・・ いや、もっと全体的に変えたほうがいい。とりなおしたほうがいいと思う。」



知らないうちに、口が滑った。



「・・・えっ?」


サクは、不安そうにこちらを向いた。



「・・・何言ってるんです?アキラ?二人共踊れてましたよ?」



泉も不思議そうに聞いてきた。
他のメンバーも不思議そうだ。

自分でも不思議だった。
かわいい後輩に、努力を重ねてきた後輩に、なんでこんなことを言ってしまったのか。
それでも口は止まらなかった。



「いや、出来てない。」



「先輩!?二人とも、ちゃんとやってたじゃないですか?というか、何が出来てないんですか?」



パクが不思議そうに話しかけてきた。いつも、コイツは二人をかばう。



「・・・パクは甘すぎんの!」



「何がですか!?本当に二人共できてたじゃないですか!?本当のことですよ!?」



「ぱっくん・・・」



タツキっくが不安そうにぼやいた。



「・・・あの?先輩?どこがダメだったか教えてもらっていいですか?」



サクが、すこしいつもより声を小さくして聞いてきた。



「だから、全部。」



「いや、それは、そうなんですけど、もっと詳しく・・・」



「っ・・・!!だから全部だっていってんじゃん!」



「さっきからなに話してるんですかアキラ?会話になっていません。」



「うるさい。」



「いいえ。うるさいのはあなたです。これでは、ただの八つ当たりじゃないですか。」


「・・・!?俺が、誰にたいして八つ当たりすんだよ!?全然違う!俺は俺の意見を言っただけだ!!」



「あの、先輩っ?」



サクが近寄ってきた。



「うるさいっ!お前はだまってろ!」



「っえ?」



この時、俺の敵は泉から、サクに変わった。



「もう一度言うぞ!出来てないのは全部だっ!基本が出来てないし、体も動かせてないッ!」



「え?せ、先輩っ?」



「だいたい、お前がチアキと一緒にグループ組む時点で違うんだよ!」



「!?先輩!そんなのはちがう!」



今まで静かだったチアキも、ついにキレ始めた。



「いや、違わない!コイツは初心者でセンスもないッ!お前にはふさわしくないッ!!」



俺の口は止まらなかった。
そして、いってはいけない言葉を言ってしまった。



「お前は、ダンス部にふさわしくないッ!!!」



「・・・ぇ?」



「だいたい、なんで男格好きてんだ?そういうのやめろ。ダンス部に泥がつく。」



「アキラッ!!」



泉に怒鳴られる前に自分の口元を隠していた。

何を、言ってしまったんだ。

彼は、彼女はあんなにも努力しているのに。なんてことを言ってしまったんだ!?



「・・・ったく。今日の部活はこれで終わり。二人はカメラもってってね。はい。解散。」



しばらく見ていた先生が、すこし苦笑いでみんなを解散させた。



俺が真っ先に出ていったのは言うまでもない。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ