長編小説

□10代目の物語
2ページ/3ページ




生まれ変わって6年が経った。1歳になってからは自分の世話は自力でするようにした。母さんも驚いてたなぁ。まさか1歳でトイレに行けるだなんて思いもしなかっただろう(笑)



この身体にも慣れてきた。前世では女だったために、なかったものが付いているのだから…慣れというのは怖いものだ。男の子口調だって自然とできるようになった。



そういえば、最近始めたことがある。
運動と勉強だ。



流石にダメツナ呼ばわりされる気になれるほど原作に忠実になろうとは思っていない。というか、成り代わりの身で原作通り事を進めようというのには無理があると思う。



運動は、やってみると案外楽しいことに気づいた。前世では嫌いだったのに…子供なだけあって身体が軽いからか?



…そして何より助かったのは気を紛らわすことができることだ。前世の人達を思い出して悲しくて途方に暮れることや、今の母さんや父さんを両親として見れなくなることが多々ある。



死んだのは高校生頃だろうか?人生を謳歌しきれない内に、親孝行出来ない内に死んでしまったのだ。むしろ未練がないという方が可笑しいだろう。…そんな私に運動はうってつけだった。



勉強に関しては、知識が既にあったから苦手だった数学を重点的に頑張った。ここまできたら努力型天才児にでもなってやろうか。
ヴァリアーの皆に会いたいからイタリア語も勉強しているというのは秘密の話だ。


−−−−


「ツッ君、御使い行ってきてくれないかしら!卵切らしちゃって…!その代わりお釣りで何か好きなものひとつ買ってきてもいいわよ♪」



ちょうど腹筋運動に捻りを加えた辺りだっただろうか、母さんが私の部屋に入ってきた。



「えー、しょうがないなぁ。ほんと?じゃあアイスでも買ってくるかなぁ」



母さんの頼みごとには弱い。本当は続きをしたかったが例のごとくお使いに行くことにした。アイス?そんなもの買うわけないじゃん。貯金しますよ貯金。



「じゃ、いってきまーす!」



小銭を握られ、玄関から元気よく飛び出した。ついでにランニングでもしながら行こうか、そう思って100mほど進んだあたり、曲がり角から突然飛び出した何かに私は避けきれず、ぶつかってしまった。



「いっでー!!はっ、大丈夫かお前!?ごめんな!?」



どうやら少年だったようだ。日焼けしてすごく健康そう。尻餅をついた少年は慌てて立ち上がり、私も立ち上がらせてすごい勢いで謝ってきた。



「全然大丈夫、君こそ怪我はないかい?」


「よかった!俺も全然大丈夫なのな。」



私は倒れる時咄嗟に受身をとったからどこも怪我はなかった。しかしチラッと少年の手のひらを見てみると擦り傷がついてしまっていた。隠しおって、生意気な。



「手に傷付いてるだろ。ちょっと付いてきて?」



バレちった、眉を下げて笑う少年の、傷のついてない方の手をとって私はズンズンと歩みを進めた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ