長編小説

□10代目の物語
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少年を連れて目的のスーパーへと辿り着いた。



「ちょっと待ってて。」
「ん?あぁ!、わかった!待ってるぜ!」



そう言って困惑気味の彼を近くのベンチに座らせて私はスーパーに入った。しかし素直と言うか変な子だ。名前も知らない会って間もない人に着いてくるとは…って私もあの子の名前は知らないけど。けど何処かで見たことあるような…?



何はともあれ私が避ければ彼は怪我をしなかったのだし。擦り傷とはいえ早く手当てしてやらねば。



そう思いながら手際よく卵と絆創膏を買って店を出る。例の少年は大人しくベンチに座って辺りをキョロキョロと見回している。可愛い。



「お待たせ。絆創膏買ってきたから手見せて。さっきは悪かったな、俺が避けていれば…」

「…あ、バンソーコー買ってきてくれてたのな。わざわざありがとう!いやいやいや、俺が急に曲がったりしたから…ごめんな?」



「買い物ついでさ。まぁお互い様ってことで?よし、できた。…ところで名前はなんていうんだい?」



会話の最中に傷のついたところは絆創膏を貼っておいてあげた。手のひらに怪我したら結構大変だよな…申し訳ない。



「本当ごめんな、ありがとう!俺か?俺の名前は山本武ってんだ!お前の名前はなんていうんだ??」

「…武か、俺の名前は沢田綱吉、ツナって呼んで?これからもよかったらよろしくお願いしたいな。」

「ツナって美味そうなあだ名!ははっ、勿論、今度は野球でもしようぜ!よろしくツナ!」



そう言って武は私の手を握ってぶんぶんと振る。そうか、見たことあると思ったら山本武だったのか…口調とかで何故気付かなかった私…けどこんな小さなうちに関わり持ててラッキー!



「そうだな、トレーニングがてら野球もいいかも。そうえば、家どの辺?送るよ。」



「汗かいて気持ちいいぜ野球!…あっ!そうだ!俺んちで寿司食ってけよ!俺の家寿司やっててさ、バンソーコーのお礼に!!」


「あー…そうか寿司やってんだ。どうしよう、(寿司か…久しく食べてないし食べたいかも)じゃあお言葉に甘えて。」



「よっしゃー決まり!こっちこっち!!」



…今度は私が腕を引っ張られる番だった。
道中は普段何やってるとか野球の話で盛り上がって、山本家までの道のりはあっという間にだった。



「…そんなわけで、お礼したいから寿司ご馳走してやってくれよ親父ー!!」


「ったく急に曲がったりするからだろうがバカ!いやぁお嬢ちゃん、うちの武が世話んなったみたいで。好きなモン腹いっぱい食ってけよ!」


「いえいえ僕の不注意でもありましたので、本当にいいんですか?ご馳走なんてしてもらって…」


「はーっ、礼儀正しい子だ!お前も見習えよ武?勿論だ!!今日はおじさんの奢りでい!」


「…ありがとうございます!ご馳走になります。」



武のお父さんは随分気前のいい人のようだ。武によく似ている。それからはすぐに打ち解けて私の大好物のイクラやネギトロをたくさん食べさせてもらった。前世の私は北海道出身だったが、新鮮さと美味しさは負けていない。むしろ今まで食べたお寿司の中で一番美味しかった。



「あー、お腹いっぱい。今日は本当にありがとうございました。とても美味しかったです。」


「いいってことよ!ツナの食べっぷりは見てて楽しかった!また来てくれよ!」


「あはは…(流石に食べすぎたか)是非、また行きたいです。武もまた今度野球やろうな。」


「おう!いつでも来てくれよ、待ってるからさ!ツナんちも今度行かせてくれよな!」


「暇な日に来るよ、野球そのとき教えて?勿論、いつでも大歓迎だから。」



…そして私は自宅へ帰ったわけだが、卵の存在をすっかり忘れていたのと夜ご飯を食べてきてそれを連絡しなかったこと、を母さんにこっ酷くしかられたのだった。…まだまだ修行不足だな。
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