坂田さん、おじゃまします。

□一日目
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ピーンポーン






仕事から帰ってきて一段落。
のんびり過ごしていた所に間延びしたチャイム。こんな時間に誰だコラ。

「はーい」

郵便配達も覚えがないし仕事の同僚を呼んだ覚えもない。何だってんだ。
警察呼ぶぞ。
イライラと共にやけくそでドアを開けると目の前に立っていた、銀髪。
え、誰。


「すみませーん夜分遅くにぃ」

にやにやと笑いながらやけに顔を近づけてくるアホ面。
酒臭いしくるくるの天パが鬱陶しいぞ!

「昼間いなかったんでねぇ、酒流してた時に思い出したんですよ」

「え、はぁ…」


流してたじゃなくて流されてたの間違いだろ。何なんだこの酔っ払い。
早く帰ってもらおうと性急に話を巻き上げてドアを閉めようとするとガンッと銀髪の靴が間にさしこまれた。

おいやめろ!まじで通報するぞ。


「申し遅れましたぁ…隣に引っ越してきた坂田と申します〜」

遅れて出してきた名刺。
『坂田信用相談所』……?


「アンタ弁護士かァ?」

「ええ、そこんとこ頭のキレる弁護士の銀ちゃんでーす。銀時と言います〜」


こんな奴が弁護士なんて世も末だ。
一応マナーとして胸ポケットに入っている紙を押し付ける。
坂田のとは違って真っ黒の紙に紫の文字でかなり派手なモノだが。

まじまじと見つめた後、坂田は目を丸くさせてこてん、と首をかしげた。

「タカスギさん?はホストやってんだ」

「これでも売れっ子なんだぜ?」

へーっ、と新しいオモチャを貰った子供みたいに目を輝かせる坂田。
どうやら白紙じゃない名刺が物珍しい様だ。


「じゃあよろしくお願いしますね、お隣様」

「お隣様?」

「ええ、恩師から大事だと教わってるんですよ。神様、仏様、お隣様!」


「なんだそれ」


えっへんと胸をはる坂田に笑みを溢すとつられる様に坂田もへにゃりと笑う。

まったく、変な隣人様だ。


結局、アイツはお馴染みのタオルやらそういう物を渡さずに自分の部屋に引っ込んでいった。
また休みができた時にでもゆっくりお茶でもしようじゃないか。



おしまいっ
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