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□Der Himmel
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(今日も空が綺麗ですね…)



私は暇なとき、いつも無意識に窓の外を眺めている。

毎日何も変わらないこの部屋の中、特にやる事も無く暇を持て余している。そう、大体の時間は空を眺めて過ごしているってことだ。














“私”は今年で32歳になる会社員。仕事は今日はお休みだ。…まぁ、最近忙しかったから有休をもらったんだ。仕事ってのは何年経っても慣れないものだよなー。


あー、高校の頃は毎日が楽しかった。仲良しのメンバーと放課後はいつもバカやって、たまにおふざけが過ぎて先生に叱られたり。勉強は常に上の中をキープしていたし、部活も出来るだけ出席して皆と練習を頑張っていた。

恋人だってその頃からお付き合いを始めたんだもんなぁ…もう16年も経ってたのか。時が過ぎるのは早いねぇ。

高校生の頃は彼も私もまだ精神的に幼くて喧嘩沢山してたっけ。

結婚?

そりゃもう21くらいの頃に籍は入れたよ。結婚式は籍を入れてからしばらく経ってからだったね。


もちろん子どもも居るよ。娘は今小学生に上がったばかりで、毎日服を泥で汚して帰ってくるよ。
お転婆なのは私に似てしまったのかな。顔は父親似でとても美人さんだから、もう少し大人しくしてれば絵になるのだけどね。


私らは共働きだけど、旦那が出勤回数の少ない仕事に就いてるもので家に居る時間は基本私より旦那の方が多いんだ。
だからなのか娘はパパっ子でさ。「将来パパのお嫁さんになる!!」って言い出すのさ。


子どもはホント素直に育ってくれて良かったと思うよ。


この先はまぁ家族3人で仲良くやっていこうと思うよ。

もうしばらくしたら仕事も落ち着くだろうしゆっくりできるからみんなで遊園地にでも遊びに行こうかとこっそり計画してるんだ。
これはまだ2人には内緒にしたい。喜ばせたいからさ。




…老後は旦那と静かに暮らしたいかな。たまに孫やひ孫に遊びに来てもらって、みんなの笑顔を見れればそれでいいと思ってる。


難しい事なんて考えてないよ。私はただ、みんなの幸せが純粋に嬉しいからその為に頑張るんだ。

人生楽しんだもの勝ち、ってね。


たとえば、空を見て“今日の空はとても青く澄み渡ってて綺麗だね”とかそれだけで笑い合えるのって、ほんの些細な事だけど幸せだろう?
















…誰かと笑い合う、ね…。

私の居る部屋にそうそう友達がくる事はない。もちろん、彼氏も。


“本当の私”は高校3年の夏入院することになり、夏休みの間ずっと外に出られない状態が続いた。

理由は小さな脳梗塞だった。私はもともと血栓が出来やすい体質らしく、細かい血栓が脳の細い血管の先っちょに詰まってその部分が壊死してしまっていたのだ。

そしてその小さい小さい脳梗塞が私の頭のあらゆるところに出来てしまっていた。

最初は記憶を失い、ボケだと言われた。
大事な事を忘れてしまい彼氏と喧嘩してしまった。
喧嘩したのは夏休みに入ってから。謝る機会も設けられず、未だに仲直りが出来ていない。もう嫌われてしまっているだろうと、そう思って連絡を取るのも躊躇ってしまう。

何より、連絡を取りたくてもずっと手が痺れていては上手く動かせないし携帯のボタンを押す事もできない。



もう、分かるでしょう。
“私”は“本当の私”の夢見た将来の姿。

…叶わない将来。それを未だに空想している。



私は病室のベッドから、空を眺める。
空想の私が言うように。

ただちょっと、憎らしげに。











(今日の空もとても綺麗で、いつもと同じ、寂しい色ですね)














end

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