ビストーマ魔術
□四章
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ルルが剛の方を見て話しかければ剛は苦笑し
「やっぱりあんたらも俺の事覚えてへんか。まぁ、会った事あるん2回ぐらいやしな」
「どういう意味かしら?」
「陽を育てた老人夫婦の孫や言えば思い出すか?」
剛の言葉を聞きルルが悩んでるとユニが叫び
「貴方もしかして!」
ユニの言葉にルルは眉を寄せ
「ユニ、誰よ」
「覚えてないの?ほら、陽がつー兄って呼んでた…」
「つー兄さんはこんなバカみたいな見た目じゃなくて爽やかな青少年だったはずよ」
「…確かに…じゃぁ誰だろう?」
二人の言葉に剛は愕然とし
「おいおい、バカみたいな見た目って…俺はれっきとしたつー兄さんやっちゅうねん!」
「ならその見た目何よ」
「これはこの方が客商売として有効やからな。それにじーちゃんやばーちゃんからは話は聞いとるよ。やから俺が陽を見てたんや。けどあいついつの間にか二人に言われた通り力つけて10神官におるしなぁ。俺が頑張って稼いで養うつもりやったのに…その為にも貯金はしとるんやからな」
「なら何でつー兄さんは二人が亡くなった時から陽に会いにこなかったのよ!陽は今でも…今でもつー兄さんが向かえに来てくれるって信じてあの家に毎日少しでも時間があるときに戻ってるのよ?!」
「言ってるやろ。陽を養う為に働いとったんや。苦手な料理も覚えて…でも実際陽に会ったら気付いてくれへんし、寧ろ疑われとったわ。悲しかったわぁ…」
「あんたがそんな見た目だからじゃないの。自業自得よ」
二人の言葉を聞いていた全員は話が反れていることに気づき申し訳なさそうに源が二人に問い
「あの…その話はまた後と言うことで…陽の怪我の原因を…」
二人は思い出したかの様にハッとなり
「そやった。陽の奴あの街に行ってあいつと会っとったで?んでその傷はあいつがつけた。目の方は…顔隠しとったからわからへんけど聞いたことある声やったわ。で、あいつが陽にあの事ビストーマのせいやいうとったわ。まぁ、賢い陽は最終的に否定してあいつ捕まえようしたんやけどな」
剛の言葉を聞いてルルが
「あのゲス野郎…てか何でそんな所に…それに貴方が何故詳しく知ってるのかしら?」
「陽が危険に合わへんように見てただけや。連れてったんはジンとニックやで。ジンとアティスとクゥはあの惨劇見て知っとるんやろ?何で連れていくかな…」
剛が溜め息を吐きながら言えば晋が疑問に思い
「あの…あいつやら惨劇って何ですか?」
「もう過去の事よ。知る必要ないわ」
ルルが答えれば剛は頭をかき
「ルル、首謀者はあいつ一人ちゃう言うたやろ。こっちにも味方おらへんと陽が危険やってわかってるんか?」
「あなたに指図されたくないわ。私達は陽の精霊獣よ」
話が纏まらない時間が続けばユニの声が聞こえ
「陽?…大丈夫?何処か違和感はない?」
「ユニ…?あぁ…左目……見えない」
「監視術を受けてたのよ。見えるようにしてあげたかったけど…ごめんなさい…」
「そっか…あの傷みはそれだったんだ…ありがとうユニ」
手を伸ばしてユニに触れようとするが視界が上手く掴めずユニの横を掠り、それを見たユニは陽の手を握りしめ
「隊長!!よかった…生きてて良かった…」
第二部隊が陽に駆け寄り涙を流しながら側にしゃがみこみ
「何であんたらが…俺はもう隊長じゃないって言っただろ」
「俺達は隊長が陽隊長じゃないと嫌なんです!」
陽は溜め息を吐きユニを見て
「ユニ…家まで連れてってくれない?今日は何だかつー兄に会えそうな気がするんだ…」
「つー兄さんなら…」
ユニが答えようとした瞬間、剛が陽の側に行き
「…剛さん…?貴方が何故ここに…」
「そんな他人行儀な呼び方せやんといてや…昔みたいにつー兄って抱きついてきてほしいわ」
「剛さんがつー兄…?そんな…」
「大きなったな、陽。向かえにくるん遅くなってごめんな?」
陽の頭を撫でれば陽は涙を流し手を伸ばし
「つー兄…つー兄…ッ…!」
「もうこれからは俺もおるから一人ちゃうで」
陽を抱き締め流している涙をぬぐってやり、そのままあやすようにポンポンと軽く背を叩いていた。