ビストーマ魔術
□四章
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陽は呆然としている中、思い出していた
「陽、ちょっと着いてこい」
「何?翔兄ちゃん」
「いいから、ほら」
兄が陽の手を掴み歩いて街から出て行き一日かけて隣の小さな街に連れていき
「翔兄ちゃん、ここどこ?早く帰らなきゃママもパパも皆心配するよ?」
「…ごめんな…陽…」
そのまま兄は陽の首を思いきり殴り気絶させ
「お前は何も知らなくていい…この街で普通に暮らせ…」
そのまま置き去りにして兄は去っていき
暫くすれば馬車に乗った老夫婦が通りかかり陽を見つけ
「あら、この子見ない子ね?何処から来たのかしら?」
「そんな所におると危険じゃ。一度わしらの家に連れていこう」
「そうね」
陽を運び老夫婦の家に連れていけばまだ目を覚まさない陽が心配になり、ベッドで寝かせる。
それから一日が経ち陽は目を覚まし
「…ここは…?翔兄ちゃん?ママ…?パパ…?」
陽の声が聞こえ助けた女性が陽の元に行き
「目が覚めたのね?お腹は空いてないかしら?」
「………」
「大丈夫よ。後から私たちが貴方のお家まで送ってあげるわ?」
「…本当…?翔兄ちゃんやママとパパ達に会える?」
「あえるわ、きっと。だから先にご飯食べましょう?」
「…うん……」
ベッドから出て相手の女性の服を掴めば頭を撫でられ、陽は顔を上げて女性を見れば微笑んでくる彼女を見て恥ずかしくなり顔を反らし、女性は何を思ったのか陽の手と繋ぎ案内がてら食卓に向かっていく。
言われた席に座った陽の前に、先程の女性が料理を並べているともう一人男性が現れ
「おや、目が覚めたんじゃな。元気そうで良かったわ坊主」
男性が陽の頭をわしゃわしゃと撫でれば陽は顔をその男性をジッと見つめ
「ほらほら二人とも、ご飯が冷めないうちに食べなさい?」
3人で頂きますと言えば陽はチビチビ食べるが家族達の事が気になりあまり食事が進まず、それを見た女性は
「大丈夫よ。ちゃんと食べたら送ってあげるから。それより君は何処からきたの?一人であんな場所にいちゃ危なかったわよ?」
「…サウスの街…一人じゃなくて翔兄ちゃんが連れてきたの。…でもいきなり殴られて…それから翔兄ちゃん何処に行ったかわかんない……」
「お兄ちゃんも一緒だったのね…でも昨日少し探してみたけど居なかったわね…もうお家に帰ってるかもしれないから戻ったら文句言わなきゃね?」
小さく頷けばまた少しずつ時間がかかるも食事を食べ、完食して二人にお礼を言えば二人は陽から離れ送り届ける準備をしだし、それを見ていた陽は
「アティス、ジン、クゥ…皆心配してないか先に見に行ってくれない?お願いね?」
陽の足下に陣が現れるが姿を見せず、陽の言葉を聞いてから三つの陣が消え
それから数分し二人が陽の所に戻ってきて
「さぁ行こうか」
小さく頷けば二人に連れられ家の側にあった馬車に乗るように言われそのまま乗り込めば馬車は発車し、暫く進んでるとジンが現れ
「陽…街はもうダメだ」
「どういうこと?」
「陽が知るには辛いだろう。戻らず先程の街に戻れ。そして家族や皆の事は忘れろ」
「ジン!何があったの?!お願い、教えて!ママやパパは?翔兄ちゃんや皆はどうしたの?!」
「…街は燃えていた…生きてる人間居ないか探したがダメだった。だが…家に翔だけは生きていた…でも殺したのはあいつだ。笑いながら両親を刺していた…アティスが止めに入ったがもう……翔はそのままどっかに逃げた。」
「そん…な……嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!皆居ないなんて!それに翔兄ちゃんがそんなことしない!」
「気持ちは分かる…だけど事実だ…」
「嫌ーー!!!」
陽の異常な叫びに馬車を止め急いで陽の所に行き
「どうしたの?何があったの?」
「話は俺がします」
「貴方は?」
「俺は陽と契約している精霊獣の一人です。先程陽に頼まれサウスの街に行ってきました。あそこはもうダメです。全員生きてはいません…」
「そんな…っ…なら、ならこの子の両親もかい?」
「はい。…殺したのは陽の兄、翔です。しかし俺達が目を離した隙に逃げられてしまい…」
「なんてことを…」
ジンの言葉を聞いた二人は絶望し手を伸ばして抱き締めようとするが、陽は立ち上がり馬車から降りて走って街に向かおうとし
「陽…行くのを止めろ。お前にあんな街を見せたくない」
ジンが陽の腕を掴み
「離せよ!離せ!皆の所に行かなきゃ…ユニ、ユニがいればきっと…!」
「死んだ人間はユニにも治せない。わかってくれ、陽…」
「嫌だ嫌だ嫌だ!そんなの絶対嘘だ!ジン…お願い…嘘だと言ってよ…」
泣きながらジンの体を殴るが絶望でその場にしゃがみこんでしまい