ビストーマ魔術
□四章
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ニックに運んでもらい例の場所に到着した陽は上空から下を眺め
「…まさかこんな所にいたとはね……どういう神経してるのやら…」
「お前があやつの事を一番知っとるだろ」
「バカ言わないでよニック。もう10年も会ってないんだから知るわけないでしょ」
「俺は少し中を見たが、あいつは昔と変わってない。寧ろ更に酷くなってるな。…人間の死体が何体かいたからな…」
ジンが言えば陽は眉間に皺を寄せ
「本当嫌になるよ…」
溜め息を吐けばニックに少し離れた場所で場所は下ろして貰い、陽は寂れた町を眺め
「…父さん…母さん…皆……」
大きく深呼吸すればそのまま町の中に入って行き、暫く歩いて目的の家に到着すれば扉を開け中に居た人物を見て
「…ひさしぶり、兄さん…」
兄と呼ばれた者は振り向き陽の姿を捉えればニタッと笑い
「お帰り、陽。今まで自由にしてやってたんだ。そろそろ戻って来るよな?」
「自由?それは違うでしょ。…俺の力が怖くてあんな所に置き去りにしたんじゃないの?」
「アハハ!確かにお前の力はすごい。けどな、俺はお前にとってたった一人の家族だろ?だからお前は俺の側に居るべきなんだよ」
「…よく言うよ……父さんも母さんも皆も殺した癖に…」
「お前はまだ俺が皆を殺したと思ってるんだな。それは違う。確かに俺はあの場にいたが、殺したのは別の奴だ。だから俺は皆の為に敵をうつんだよ」
「…別の…奴…?兄さんは知ってるのかよ…」
「あの頃、流行り病が町中に広がっていた。だから俺は陽だけでも無事にと思ってあそこに置いてきた。それで医者も治せないと言われビストーマに頼み込んだんだ……そしたら打たれた注射で余計に悪化して…死んだ」
「嘘だ!そんなわけない!絶対嘘だ!!ほんとの事話せよ!」
「…これが事実だ…」
「…そん…な…」
涙を流しながら陽は座り込み呆然となりそれを見た兄と呼ばれた男は背を向けニヤリと笑っていたのであった