それはきっと(b)

□11
1ページ/1ページ



確かマグマ団は、えんとつ山に行くって言ってたな…。

テッセンさんからダイナモバッジをいただいた次の日。
(ちなみに、アルナイルがダンバルからメタングに進化してます)
あたしはえんとつ山に来ていた。

途中、なんとかという博士に会いに、ハジツゲタウンへ行くらしいハルカちゃんとユウキくんに会った。
一緒に行きませんかと誘われたが、マグマ団の動向を確認したいと思っていたあたしはそれを断ったのだ。


そして、やはりえんとつ山にはマグマ団の姿があった。
……のだが。
マグマ団がバリケードになってロープウェイ乗り場を塞いでいるせいで、山頂に入れそうにない。
……会話から予想するに、誰かを待っているらしいことは確実だ。
プラス、あたしを見ても何も動きを見せないということは、この間海の科学博物館で会った奴らとは違う者たちなのだろう。


「ハジツゲに向かった者たち……なにをチンタラとやっておるのだ……」
「!?」


マグマ団の一人の言った言葉にはっとする。

ハジツゲタウン。
そこはもしかしなくても、少し前に別れたあの二人の目的地だ。

……このままじゃ、ユウキくんたちがマグマ団とかち合うかもしれない。
でも、今から戻って追いかけたところで、追いつくのはまず無理だ。

なにか、あの二人より先にハジツゲに着ける、近道のようなものはないのか。
もしできるのなら、ユウキくんたちより先に行って、おそらくすでに居るであろうマグマ団をやっつけたい。
そんなことを思いながら、あたしはマップナビを起動させる。

そして見つけた。


炎の抜け道。


やっぱり炎タイプのポケモンたちが多いだろうから、スピカがまだ戦力に数えられないあたしたちではなかなか厳しいものがある。
……けれど、今はいかんせん時間がない。
幸いあたしはポケモンと話すことができるし、走りつづければなんとかなるだろう。
いつもレグルスたちに頑張ってもらっているのだから、こういう時くらいはあたしが頑張るべきだ。


「……行くか」


小さくそう呟いて、あたしは走り出した。





×××





「ユウキくん!ハルカちゃん!」
「え?なまえさん?」
「どうしたんですか?そんなに急いで……」


よくやった。頑張ったあたし。
そんなふうに自分を褒めながら、呼吸を落ち着かせる。


「ちょっと急用ができて、ハジツゲに行かないといけなくなったんだ」


だから二人と一緒に行こうと思って、と笑顔で付け足す。
……まさか先回りするつもりだった、とは言えない。


「そうなんですか!じゃあ一緒に行きましょう!」
「……あ、でもなまえさん、少し休みますか?」


ハルカちゃんがあたしを気遣うように顔をのぞき込む。
それに笑って首を振った。
白状すると本当は休みたいところだが、時間が惜しい。


「あたしは大丈夫。心配してくれてありがとう。
それより、歩きながらその博士について教えてくれる?」


恐らく、マグマ団の狙いはその博士がらみだろうから、と心の中で付け足した。
火山灰で覆われた道を歩きながら、ユウキくんとハルカちゃんが口を開く。


「ソライシ博士は、隕石の研究ですっごく有名な人なんです」
「隕石とポケモンの間になにか関係があるとかないとかで、父さん━━、オダマキ博士とも一緒に研究してるんです」
「へぇ……。すごい人なんだね」
「あ、もうすぐでハジツゲに着きますよ」


にっこり笑ったハルカちゃんに、あたしはひとつ頷いた。





×××





「ええっ!?ナントカ団とか言う連中にソライシ博士が攫われた!?」


ソライシ博士の家でそう声を上げるのはユウキくん。
博士の助手らしい女性が、その言葉を肯定する。


「怪しい連中……マグマ団って名乗ってました。
ソライシ博士が研究なさっている隕石について何か企んでるみたいで……。
博士ったら、自分の研究に興味持ってるって言われたら、ホイホイついて行っちゃって……」
「なまえさん、どうしよう……!?」
「博士の研究、絶対に悪用されちまう。なんとかしないと……」


そうだ。なんとかしなければ。

話によれば、ソライシ博士とマグマ団は流星の滝に行ったという。
……それなら、もちろんそこに行くしかないだろう。


「ユウキくん、ハルカちゃん。
あたしが流星の滝に行ってくるから、その間、二人はここでこの人とこの家を守っててくれる?」
「!……でも……」
「大丈夫。あたし、これでもリーグチャンピオン目指してるんだから。
そう簡単には負けないよ」
「━━━……」


しばらく無言だった二人は、顔を見合わせてから頷いた。


「…分かりました。なまえさん、気をつけて!」
「ありがとう。
……でももし、マグマ団が研究資料をねらってこの家に来たら……」
「そのときはオレたちが何とかするんで大丈夫です!」


胸を張ったユウキくんに、少し声を立てて笑う。
それから、頼んだよと言い残して家を飛び出した。


ユウキくんたちにはああ言ったけど、あたしは彼らがマグマ団と関わることを望んではいない。


マグマ団に目を付けられるのはあたしだけでいい。
記憶が無いあたしと違って、あの二人は、普通に生きて、生活しているのだから。









(目指すは、流星の滝)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ