それはきっと(b)

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トウカの森を抜けたあたし達は途中にある花屋に寄ったり、トレーナーとバトルしながらカナズミにやってきた。
着いたのは日が傾いたころだったため、そのままポケモンセンターに直行してそこに泊まることにする。

ポケモンセンターにたどり着くまでに見て回った感じだと、なかなかに大きな街のようだ。
ポケモンと人とが仲良く暮らしているということは、ほかの街と変わらないけれど。


「さーてレグルス、アルナイル。
この街にはポケモンジムがあります!
早速明日にでも挑戦したいと思ってるから、今日はゆっくり休んで明日に備えてね!
……それで、バッジ貰ったら、研究所に連絡入れよう」


あたしの言葉に了解と頷く二体に笑いかけると、あたしたちは早めに休んだのだった。




×××




「ノズパス戦闘不能!よって勝者チャレンジャーなまえ!!」
「よし!!」


日付とところ変わってカナズミジム。

あたしたちは、ジムリーダーのツツジさんとのバトルにたった今勝ったところだ。
レグルスとアルナイルを思い切り撫でて褒めていると、ツツジさんがあたしのもとに歩み寄ってくる。


「ポケモンリーグの決まりでは、ジムリーダーに勝ったトレーナーにこれをお渡しすることになっています。
どうぞ、ポケモンリーグ公認のストーンバッジ、受け取ってください」


そう言って差し出されたストーンバッジを、あたしはお礼の言葉とともに受け取る。
それを見ていたツツジさんは、くすりと笑った。


「……えっと、あたしなんか変なことしました?」


あたしがそう問えば、ツツジさんははっとしたようにごめんなさいと謝る。
しかし口元に楽しそうな笑みを浮かべたまま続けた。


「なまえさんが、あまりにも嬉しそうにバッジを受け取るものですから。
あなたが初めて手にしたバッジが、私からのもので嬉しいと、そう感じていたのです」


その言葉に、少々恥ずかしくなった。
……でもまぁ、ツツジさんも嬉しくてあたしも嬉しいなら、いいんじゃないかと思うことにする。


「なまえさん。
あなたはきっと、これから他のジムを回り、近い将来きっとリーグに挑戦するでしょう。
……どんなに勝ち続けても、それは共にいてくれるポケモンがあってこそだということを、決して忘れずにいてくださいね」


そう言ったツツジさんは、レグルスとアルナイルを見ながら、なまえさんとこの子たちなら大丈夫でしょうけど、と続けて笑う。

それに笑顔を返し、あたしはカナズミジムを後にした。
(ちなみに、ジムを出るときにこれも持って行ってくださいと、がんせきふうじの技マシンもいただいた)


ジムを出るとき、いつの間にか、入り口にある像にあたしの名が書かれていて、それがまた嬉しかった。




×××




ポケモンセンターで、あたしは画面に向かう。


《やあなまえちゃん、数日ぶりだね》


画面の向こうで、オダマキ博士はにこやかに笑う。


《毎日会っていたものだから、数日あわなかっただけなのに随分久しぶりに感じるよ。
…そう言えば、センリさんが、なまえちゃんがリーグ挑戦を決めたらしいって言ってたけど……本当かい?》


あたしはその言葉に、先ほど貰ったストーンバッジを出してみせる。


《!!それはカナズミのストーンバッジ!
もう手に入れたのか、なまえちゃんは仕事が早いね!》
「あはは、レグルスたちのおかげですよ」


そう言ってボールから出していたレグルスとアルナイルを両手で撫でる。


《おめでとう!……それにしても、リーグ挑戦か。
頑張りなさい。キミたちならきっと上を目指せる》


純粋に応援してくれる博士の言葉に、あたしは笑顔で出来るとこまで頑張りますと告げた。


《…それで、これからどこに向かうつもりかな?》
「ムロタウンに行こうかと思ってるんですけど、海を渡らなくちゃいけないんですよね。
浜辺の小屋にハギという船乗りのおじいさんが居るらしいので、明日そこに行ってみようかと思ってます」
《なるほどね。
……ところで、カナズミに居るということはデボンコーポレーションにはもう行ってみたかい?》
「……あ、そう言えばダイゴさんが立ち寄ってって…」


博士の言葉で、ポケナビを貰ったときにダイゴさんから、カナズミに行ったらデボンに立ち寄ってほしいと言われていたことを思い出した。


「………明日、ハギさんのところ行く前に寄ろうと思います」
《ははは、忘れていたこと、ダイゴくんには秘密にしておいてあげよう》


楽しそうに笑う博士に、すいませんと苦笑しつつ謝る。
構わないさ、と言ってから、博士は続けた。


《それにしても、楽しく旅をしているみたいで安心したよ。ほかに何かあったかい?》
「あー…、あたしとレグルスが初めて会ったときに、レグルスを襲っていた人たちの仲間と思われる人と遭遇しました」
《えぇ!?》


あたしのその報告に、博士は驚きの声を上げる。


「マグマ団って名乗ってました。
あたしが確認したのは男ひとりで…狙ってたのはデボンの研究員さんの書類みたいでした。
トウカの森でちょうど研究員さんと話していたときにマグマ団が来たので、レグルスと軽く倒しましたけど」
《そ、そうか。怪我も無さそうだし良かった。けど…》


その先に博士が続けて言いたいであろうことは分かっている。


「大丈夫です。無茶はしません。
……ダイゴさんにも言われていますから、心配しないでくださいね」
《はは、分かっているならボクから重ねて言う必要はないね》
「それじゃあ、今日のところはこれで」
《うん、また連絡を待っているよ》


通話が切れるその直前に、ポケモン図鑑の方もよろしく頼むよ!と早口で言った博士に笑って頷く。
そして画面は暗くなった。

暗くなった画面から目を離して、今日泊まる部屋へ行こうと立ち上がれば、レグルスとアルナイルがあたしを微妙な目で見ていた。

あたりを一通り見回し、近くにトレーナーが居ないことを確認してからあたしは口を開く。


「……え、なに?」
『顔出してほしいって言われてたのオレたち知らなかったんだが?』
「……そりゃあキミらがアチャモたちと遊んでたときに言われたからね。
…ほら、バーベキューのとき、あたしとダイゴさん二人で話してたでしょ?」


そう言えば、あぁ、といいたそうにしてから、口を開く。


『次から何か予定入ったらオレたちに教えとけ』
「えぇ……」
『その方が安全』


アルナイルにまでそう言われて、あたしは苦笑する。
……これじゃあまるでレグルスとアルナイルがあたしの保護者みたいじゃないか。
本当はあたしが主人だからあたしが保護者のはずなのに。

そんなことを割と本気で考えながら、あたしはレグルスたちと共に部屋へ戻るのだった。










(リーグ制覇に、まずは一歩)

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