中編

□男前
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真島組の新年会があるから、参加するようにと
真島さんに言われたのが昨日の事。

「いつですか?」って聞いたら「明日やで。」と
軽く言われて驚いていたのだけど、「特にすることもないし
ただワシの隣にいて、ニコニコ笑ってるだけでええ」って
言われた。



・・・でも、そんなこと出来る訳ないじゃない。
一応、組長である真島さんの彼女なんだから、もしかしたら
・・・いや、もしかしなくてもこの組の姐さんになるかもしれないって
ことだよね?

そんなのんびりと構えているだけなんて、私には無理。


当日忙しそうに準備に走る南さんを捕まえて、私にも出来ることが
ないか聞いてみた。

「姐さんにそないなことさせられませんって!!」
ビール瓶のたくさん入ったケースを3ケースも抱えていた南さん。
少しお手伝いしたかったのに、あっさり断られてしまった。

・・・すごい力持ちなんだなと驚きつつ、後をついていった。

会議室の机と椅子は綺麗にセッティングされていて、机の上には
白いテーブルクロスが敷かれていて、真ん中には薔薇とカスミソウの
飾られた花瓶が置かれている。

「わぁっ。お花・・・可愛いですね。」

ピンクと黄色い薔薇は、淡い色合いでとても可愛い雰囲気を出している。

「これも南さんがセッティングしたんですか?」

ビール瓶のケースを下ろして、1本1本をテーブルに置きだしたので私も
一緒にビール瓶を運ぶ。

「そうっす。親父が姐さんが来るから、花でも飾っといてやって言っとったんで
見繕ってみたんです。」

心配そうにこちらを見るから、もしかして?って思った。

「このお花・・・。南さんが選んだんですか?」

「そうっす。姐さんのイメージで選んだんですが・・・。どないでしょ?」

何だか南さんのお顔・・・赤くなってる。
つられてこちらまで赤くなってしまった。

「わ、私のイメージですか?ちょっと可愛い過ぎじゃないですか?」

カスミソウみたいに、地味なイメージなら納得するけど黄色とピンクの薔薇
なんて、ちょっと買いかぶり過ぎじゃないかな。
照れていたら、

「そんなことないっすよ!姐さんはパステルカラーみたいにほんわかしとって
それでいてこの薔薇の花みたいに存在感のある可愛い姐さんやと思っとります!」

南さんがすごく力説するので、ますます恐縮しちゃったけど気持ちはすごく
嬉しかったので、

「ありがとうございます。」

って、ニッコリ笑ってみせた。



南さんだけじゃなく、ちらほらと組員の方が準備のお手伝いに参加しだしたので
準備は思ったよりも早く終わった。


組員の方のお部屋に行って、準備が終わったことを告げると組長室からちょうど
真島さんも出てきた。

「何や小雪、来とったんか?どこにおったんや?」

ちょっと不機嫌そうに、真島さんが私に声をかけてきた。
そういえば、ここに来てから真島さんには会ってなかったって気づいた。
入り口で南さんにばったり会ったから、ケース持ちます手伝いますってちょっと揉めて
そのまま会議室に行っちゃったから。

「ちょっと南さんのお手伝いしてたんですよ。」

真島さんの腕に自分の腕を回し、ぴとっとくっついた。
いつもの真島さんの匂いがする。

「そんなん下の者に任せとけばええんや。小雪はワシと一緒におればエエ言うておいたのに。」

まだ不満げだったけど、くっついてきた私には満足したみたい。

「あ、お花・・・綺麗でした。ありがとうございます。」

「まだワシは見てないけど、小雪が気に入ったんなら良かったわ。」


会議室に入り、真島さんの言葉通り真島さんの横に座らされて、大人しくしているようにと
念を押された。
せっかくお手伝い頑張ろうと思ってたのに。

会が始まり、色んな組員さんが真島さんのところにあいさつに来る。
見た事ある人ばかりだったけど、名前も覚えられないし私も一緒に一応挨拶もしていた。

真島さんは、楽しそうにお酒を飲んでたまに私にちょっかいを出しては、
かなり酔っているようだった。




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