バトルビーダマン

□絆と呼べるべきもの
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リエナが俺にくれたもの。それはミサンガだった。最初はてっきり、俺とリエナでするかと思っていた。だがそれは違った。
「炎呪さんと一緒にしてね」
まさかリエナからそう言われるとは思わなかったから、かなり驚いた。

けどあの炎呪がこれをしてくれるとは、思わない。だから、言う機会をずっと逃して来た。まぁ、いつも傍に居る訳でもないしな。
だが、その機会は突然訪れた。ある日、炎呪が珍しく俺達と一緒に居て。暇潰しと彼は言うけれど俺はすごく嬉しい。久々に炎呪と一緒に居られるから。ヤマトとひと勝負終えた炎呪が俺の方に来た。渡すなら今かな?と思った。
「………炎呪。何も言わずにこれを受け取れ」
俺はそう言って、炎呪にミサンガを渡した。
「………?」
「俺とお揃い」
「………ふん」
炎呪は俺に背を向けた。まぁ、やっぱりなとは思っていた。が、ちょっとしてから、俺の方を向いた。
「これで、合ってるか?」
あの炎呪が、早速腕に付けていた。手袋を取って。俺はそれにかなり驚いた。けど、結び方が緩く、今にも取れそうだ。
「合ってるけど……緩すぎ。もっとぎゅって結ばなきゃ」
「………お前がやれよ」
俺は、はいはいと言いながらキツく結んでやった。そして炎呪は手袋をし直していた。
「……お前のもやってやる。貸せ」
これも予想外な事なので、俺は炎呪をまじまじと見てしまった。
「……自分じゃ上手く出来ねぇだろ」
「あ、いや、そうだけど……。ま、まぁ、お願いするよ」
炎呪にミサンガを渡し、手袋を取り、腕も出した。炎呪は手袋しながらも、ミサンガを結んでくれた。
「………肌、白いんだな」
「え?あ、あぁ」
「………」
俺の腕を掴んで離さない。どうしたんだろ、今日の炎呪。いつもの炎呪らしくない。そこが怖いが、炎呪に変わりはない、筈……。これで炎呪じゃない誰かだった方が嫌だな。だから炎呪だと信じるさ。俺は炎呪を見つめた。
「………グレイ」
「うん?」
「………いや、何でもねぇ」
炎呪は掴んでいた手を離すと、ウェンの所へ行った。バトルをするようだけど……本当にどうしたんだろ。呼んだかと思えば何処かに行くし。今日程炎呪の事が分からない日はないだろう。俺がため息を付いた時、リエナに肩を叩かれた。
「渡せて良かったね」
「あ、ああ……。けど……何だか炎呪らしくないと言うか………」
「あの態度は、お兄ちゃんの前だけだよ?見てる私には、そう見える」
けどなぁ………。そこには違和感しか居なくて。だから俺は、素直に喜べない。
仕方がないから、ヤマトに聞いてみる事にした。って、何でヤマト何だろうな。


「あん?炎呪の様子がおかしい?そんな事ないやろ」
ヤマトもやっぱりか。まぁ、俺へのさっきの態度以外、普通だしな。疑わないよな、普通。
「………そう、だよな。すまん、変な事聞いて」
「おう?」
俺はヤマトから離れ、炎呪とウェンの所へ向かった。
その近くには、リーが居た。
「兄さん、必死ですよ」
「それはいつもの事だろ」
「そうでしたね」
ウェンは、炎呪から俺を奪うとか、いつも言っている。そして炎呪に戦いを挑み、負けてる。俺的にどっちを応援して良いか、分からない。どっちにも勝って欲しいと、いつも思っている。
「ウェン。いい加減諦めろ。お前はこの俺には勝てねぇんだよ」
「るっせー!今日こそ絶対勝ってやる!見てろよ!」
………こうして見ると、炎呪はやっぱりいつも通りだ。俺への態度が変わったのかな……。俺は二人のバトル中、ずっとその事を考えていた。



バトルは、炎呪が勝って。炎呪が俺の方に近付いて来た。
「お、おめでとう……?」
取り敢えず、そう言ってみた。何と声を掛けていいか、分からないからな。炎呪は無言で俺を見つめて来た。本当にどうしたんだろうか。俺が不思議がっていると、炎呪はふっと鼻で笑った。
「当然だ」
まぁ、だよな。
炎呪は、相変わらず強い。その強さが鈍る事も無く。俺は、驚きを隠せずにいた。何でこいつは、こんなにも強いんだろうか。その強さの秘訣は、過去にもある事だって、俺は知っている。炎呪が前に、己の過去について話して来てくれた事があった。その時は本当に嬉しかった。だから俺も話した。けれどその時……たった1人の家族のリエナを、解放してはくれなかった。意思疎通が出来たかと思ったら、そんな期待は簡単に打ち砕かれ、俺は現実を見た。けどまぁ、今じゃ俺の事大好き人間だから、良いんだけどさ。あの頃を思い出すと、な。……うん、あまり思い出さないようにしよう。
炎呪は俺の頭をポンっと撫でると、ふっと、また笑って来た。
「グレイ。たまには俺とバトルするか?」
「え?……いや、いいや。勝てねえのは、分かってるしさ」
「………ふん」
炎呪は、俺に背を向け、何処かに行ってしまいそうに見えた。だから俺は引き止めた。幾ら、全てが終わった後と言っても、俺は炎呪に、傍から離れて欲しくない。
「炎呪、行かないで」
「………」
「もう何もかも終わっただろ?だから、俺と一緒に………」
「………」
無言の炎呪。けれど、じっと俺を見つめている。その青い瞳で。
「………」
炎呪は俺が掴んでいた腕を振り払うと、やはり行ってしまった。後を追いかけようとしたら、ウェンに止められた。
「おいっ、グレイまで行く必要ねぇだろ!?」
「でも、炎呪が……」
「俺が居るじゃねぇか!」
「ウェン……」

その時、俺はウェンとの思い出を、思い出してしまった。やさくれてた俺を、救ってくれた時の事を。そして、シャドウを先に抜けた事や、その後に力を貸してくれた事。

俺は、どっちを選んだんだら良いんだよ。







「………グレイ。このミサンガがある限り、俺達は繋がっている。だから、心配するな。お前に危機が迫っても、俺は直ぐに駆け付ける。だから、安心しろ」










END

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