バトルビーダマン

□昔と今
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炎呪は良く、一人で考え込む。俺やウェン達には言わず、ずっと悩んでいる。その事に俺が気付いて悩み事でもあるのか?とか聞いてみるんだけど、別に……。といつも言われる。やっぱ俺じゃ頼りないのかな。って炎呪の場合、そう言う訳じゃないか。アイツは、ヤマトみたいに素直に何でも話せる奴じゃないしな。分かってはいたが、こうだとな……。
仕方がないから、炎呪を呼び出して、二人で話す事にした。
「……何度言われようが、別に悩み何かねぇよ」
「………けど、よ、明らかに悩んでるよ、な?……なぁ、話してみろよ」
「………」
炎呪はいつしか、俺に甘えなくなっていた。そう、ウィナーズが終わった後、姿を消した時から。その後も出会ったんだが、あの時も何も話さなかった。俺の知ってる炎呪は、いつの間にか居なくなっていた。そこに居るのは、かつての炎呪。あのシャドウにいた頃の炎呪だ。
「…………なぁグレイ。俺は……俺の姿は、お前にはどう映ってる?」
「どうって……」
昔のお前だな。って言って大丈夫なのだろうか。分からず黙っていると、ため息が聞こえて来た。
「お前が答えられない程に、俺は変わったか」
「………変わったと言うより、昔の炎呪みたいだなって思って……」
それを聞いた炎呪は、一瞬怖い顔をしたが、ふっと笑っていた。
「昔の俺、か。かもな」
「炎呪………」
「…………グレイ。抱かせろ」
「……………うん」
俺は小さく頷いた。


そして、久々に身体を重ね合わせた。炎呪の呼吸、炎呪の体温、炎呪の匂い。全てが久々だったら、俺は炎呪を求めた。炎呪も俺を求めてくれた。何度も俺の名前を呼んで。深いキスをして。

久々過ぎて疲れたのか、抱かれた後、俺はそのまま眠ってしまった。
「………グレイ。寝ちまったか。………可愛い奴だ、本当。……お前が居なきゃ、俺は無理だな。だからグレイ。俺を、裏切るな」


俺が目を覚ました時、炎呪は隣にいて。てっきり、俺が寝ている間に行ってしまったかと思っていた。良かった。まだ、一緒に居てくれるんだな。俺は炎呪の手を握った。
「………安心しな。俺は、何処にも行かねぇから」
「おっ起きてたのか?」
「あぁ」
予想外過ぎて、俺は焦ってしまった。そんな俺を見た炎呪は、笑っていた。
「お前は本当に分かり易いな」
「るっさい」
炎呪は笑いながら俺の手を握り返して来た。いつも炎呪の手は冷たいのに、今日は温かった。安心、してんのかな。だったら嬉しいな。俺は眠気がまだ残って居たので、また眠る事にした。
「……また寝るのか?」
「ああ」
「そうか……。お休み、グレイ」
そっと俺の頬にキスをする炎呪。驚いたが、俺はにやにやしながら、眠りについた。
あの怖い印象しかなかった炎呪が、今じゃ俺にだけはこんなに優しい。それが何よりも嬉しくて、幸せだ。けどその反面、疑う部分もある。昔が昔だからな。あの炎呪がここまで変われるとは、思ってもいなかった。きっとヤマトがこんな炎呪を見たら、驚くんだろうな。ウェンは……気持ち悪いとか、言いそうだな。けどちょっと見てみたいな、皆の反応を。炎呪に言ったら、絶対に駄目だと言われるな。別に隠す必要もない気がするんだけどな。
俺はそんな事を思いながら、深い眠りについた。






END

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