バトルビーダマン

□己の為に
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グレイがシャドウに居るのは、妹の為。それだけの為に此処に居る。下らねえ。
初めはそう思っていた。奴が何をしようが、俺にはどうでも良かった。だが、グレイの行動は、俺を苛立たせた。
生温いやり方
相手に止めを刺さないそのやり方
コイツは、何がしたい。何故相手を完膚なきまでに潰さない。
ウェンはそれに比べ、良く分かっている。相手の弱みを握り、弱点を掴み、それをわざと使って。そして完膚なきまでに叩きのめしている。俺がそう、教えたから。

どんな手段を使ってでも勝て。

俺はそう、言い続けた。だがグレイの奴はどうだ?俺に反抗してきやがって。それがどうなる事かも知らねえで………。


俺はシャドウのメンバーを使って、グレイにそれを分からせてやろうと思った。


グレイを夜、一人で山奥に呼び出して。
「炎呪………?」
今だ、やれ、お前等。俺は合図をして、グレイに奇襲を仕掛けた。
「!くっ………」
グレイを殺す勢いで、ビー玉をグレイに向かって打っている。さあグレイ。此処まで来たら、お前もやるんだ。逃げてばかりでは駄目だ。
「お前等……!何をしやがる!」
何を言っても無駄だ。こいつらは、アババがあの眼を使って操っている。倒さない限り、攻撃を止めないさ。
「同じ仲間じゃないのか?!」
グレイは木の陰に隠れながら。そう言っていた。
「戦え」
「……えっ」
俺はそれだけ言って、その光景を見物していた。
「戦えって………」
グレイはやっとクロムゼファーを取り出して、打ち出した。遅せーよ、それじゃ。初めから出してねえと。
「くそっ!」
そうだ。そうやって奴らの身体にビー玉を当てろ。確実に仕留めろ。




やっと全員を気絶させたか。
「長げえよ。何分掛かってんだ」
「炎呪………」
俺は木の上から下りて来て、グレイの所に向かった。
「言った筈だ。シャドウには、情けなんて言葉は存在しねえと」
「そうだけど……」
「……死ぬぞ」
「え……」
「甘い考えを持っていると、いつかは死ぬって言う事だ」
俺はグレイの胸の所に、ぽんっと言う感じで拳を当てた。
「自分の身は自分で守れ。そして……、
手加減はするな」
「それが、シャドウのやり方……」
「ああ、そうだ」
弱い奴は、死ぬだけだ。シャドウでは強い奴だけが生き残る。そう言った世界だ。
「妹を助けたいんだろ?なら強くなれ」
「………………」
「まずはあのユンファ兄弟を倒して見ろ。その次には、俺を倒して見ろ」
「炎呪を!?」
「………あぁ」
皆、俺と戦おうとはしない。それは、俺と戦えば死を意味するから。だがよ、それじゃこの世界は生きて行けねえよ。
「……帰るぞ」
「えっ、こいつらは………」
「弱い奴は、シャドウには要らねえよ」
「………」
俺は己為に、強くなる。そして、もう二度とあんな思いをしないために。

山を下っている時、グレイは何も喋らなかった。まあ俺もそうなのだが。

「………なぁグレイ」
「何だよ」
「……もしも、凄く信頼していた相手に裏切られたら、お前は平然で居られるか?今まで通りで居られるか?」
「………それは」
無理に決まってんだろ。俺が、そうだったから。コーネルは、俺が強くなって行ったことに腹を立てて、俺の事を、あの時あの場に居た全員に話をしていた。そして俺は居場所を無くして。
何がいけねえんだよ、裏ビーダーの子供って言う事が。俺だって好きで、アイツの子供になった訳じゃねえのに。だから俺は、コーネルを殺した。俺の全てを奪ったから。
「………忘れろ、今の話は」
「……………」
俺、どうかしてるな。グレイにそんな事を聞くなんて。

「炎呪、お前………」
「………」

グレイが立ち止まっていたが、俺は無視して進んだ。






次の日。
グレイは朝から的当て場で機械と戦っていた。その光景には、驚かされた。
確実に、心臓の所にビー玉を当てていて。そして、アイツの瞳には、何処か憎しみの炎が見えた気がした。
「………俺、何かやっちまったのか」
昨日の言った事が原因だったりしてな。ま、何でも良いか。アイツが強くなれば。

グレイ、もっと強くなって、俺を越えろ。










END

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